<分け目に願うは/三成>
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「三成、行くのですね」
城の前には、たくさんの兵。
私の問いに反応した三成が、すっと膝をつく。
「苺様…
秀吉様の敵討ち、必ずや!」
空の色が、濁っている。
晴天とは言えないその空のもと声を張り上げた三成と同じように私は屈んだ。
「顔をあげてください、三成」
「はっ!」
青い、透き通るように白い肌。
綺麗な銀の髪、金色の瞳。
彼を見据え、私はその首にお守りをかけた。
「私が願掛けしたお守りです
父上の形見だから、ちゃんと返してくださいね?」
豊臣の家紋が入ったお守り。彼がそれを握って立ち上がるのを見ていると、自然と視界がぼやけた。
-行ってしまう。
「絶対ちゃんと帰ってきて…返してくださいね!」
こんなにも涙が出るのも、悲しいのも父上のことを思い出しているからだろう。
しっかりと抱きしめた彼の体は細く、冷たく、私を不安にさせた。
「心得ました…苺様」
「私、待っております
三成、吉継、皆様もどうかお気をつけて」
兵の皆様はしっかりと頷き馬を走らせ始めた。
吉継も続き、私は三成から離れると最後の挨拶を交わす。
「私、三成が帰ってきたら話したいことがあるのです」
「話したいこと…?」
「はい、だから早く帰ってきてください」
また、ここに。
「すぐ戻る…苺」
静かに接吻が交わされた後、三成は出陣していった。
私は自分の腹部に手を当てながら、空を見上げた。
*
9.15
関ヶ原が始まった日
分かりづらいですが、ヒロインは秀吉の娘で、三成の子供がお腹にいる設定でした
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