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「見合いは取り消し…ふむ」

さてさてよくある真のラスボスの前には結構なレベルのボスがいるの法則に良くも悪くも乗っ取られ。
家康さんと3人で話した時以来、無言の圧力をかけてくる鬼畜石田さんを乗り越えないまま、まさかの秀吉公と対面という事になってしまった。


広い和室の高いところに秀吉公、その少し下に竹中さん。
そして前には徳川さん、石田さん、少し後ろに私。
横に可愛らしい幸村さんという配置の中。

「秀吉公のご好意には甘えたいところでありますが、某にはまだ早いと」

徳川さんは秀吉公に毅然とした態度でそう言った。

「つまり家康君は婚約は無し、だね?」

特に表情を変えず、何かを思案するような仕種を見せながら竹中さんは石田さんに意見を促す。

そう。
これは最初にお見舞いの取り消しをしておき、後は気楽に遊びましょう作戦!取り消し後も滞在できるようなら何日か遊んで、なお気が変わらないならば本当にお見舞いは取り消しですよ、というのが優しく寛大な徳川さんのお考えである。

問題は石田さん。
まさか私とお見舞いしたいなんて言わないだろうから、取り消さないという心配は無いけれど、私が幸村さんにゾッコンという事情を秀吉公にチクりそうな辺りが怖い。足ブルブルですよ!ああそれにしても少し緊張してる幸村さん可愛い!

「私は……」
「…っ」

「もう少しだけ、考える時間を頂けますか」

隣の徳川さんと前にいた竹中さんが、意外そうな表情で瞬きを一つ。石田さんは凛とした姿でただ前を見ていた。

「三成、時間はいくら使ってもよい。よく考えて決めるのだ」
「…秀吉様、半兵衛様…ありがとうございます」

深々と頭を下げた石田さんが何を考えているのか分からないまま、私達は部屋から退室することになる。最後に部屋から出ようとしたのだけれど、廊下に出た所で竹中さんに肩を掴まれた。

「竹中…さん」
「やあ七海君。話があるんだけど、いいかい?」
「は、はあ…」



+++

こ、こ、怖い。正直怖いぞ。竹中さん。
すたすたと、でも音をたてずに歩む竹中さんの後をついていくと、ある一室に通される。書物や地図に溢れた部屋だ。

「2人分、お茶をいれてきてくれるかい」
「あ、あ!お構いなく!」
「まあまあ。力を抜いて座ってくれ」

すぐに女中さんがお茶を運んできて、私と竹中さんは日本地図の置かれたちゃぶ台のような物を挟んで座る。

「さて、七海君。率直に聞くけど……三成君のことは好きかい?」
「あー…はいは……
……いやいやいや!ま、まだどっちつかずな感じです!すいません!」

危ない!緊張に任せて肯定してしまいそうになったわ!
一息に喋り終えて、相変わらず肩に力が入ったままの私を見ながら、竹中さんは妖艶な笑みを浮かべてちゃぶ台の上の茶を奨めてくれた。

「三成君はさ、不器用だろう?だから勘違いされることが多くてね。候補の子達は皆怖がるんだ。で、お見合いはいつも破綻。
…七海君が初めてだよ。三成君が考えるなんて言った相手は」

その不器用(というか多分元より秀吉さん達の事しか考えてない)のレベルが人並み外れているし、お見合い相手の子達が怖がって意見できないのもとても共感できる。
私だって怖がっていたし、石田さんも苛立っていた。つまりは考える、の発言の意味が分からなくて怖い。

「だから僕はやっぱり、二人にうまくいって欲しいと思ってるし、期待もしてる」
「…力の限り善処します」

上手くいったら私めちゃめちゃ困りますが!
半兵衛さんの真剣な眼差しに負けて首を縦に降った。多分、本当に石田さんを大事に思っている人なんだろう。

「うん。ぜひ上手くやって欲しいな」

白く、女性的な手(良い意味!褒め言葉で!)で、竹中さんは私の手を握る。
はい、と弱々しい返事をしようとした私であったが、ぎゅっと力強く握られ違和感を感じた。

(ん…?)
「是非、上手くやって欲しいな」
「いたたたたたたたた!骨鳴ってます!痛い!頑張りますから!全力でやります!」

竹中さんはやっぱりドのつくS、ドSでした。
っていうかお見合い不成功=幸村さんの所に帰るの方程式が、今まさにお見合い不成功=死に書き代わったんですがどうしましょう。
助けて幸村さん、助けてお母さん(と書いて佐助さんと読む)!




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