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ビックすぎる豊臣秀吉公に挨拶した後、私は石田さんの後にくっついて城内の別の建物まで来ていた。
もちろんメインのお城までは大きくないが、広々とした場所だ。



「ちょ、石田さん歩くの速…!本当頼みますから!待ってください!」

それにしても石田さんは長い足でスタスタと歩く。歩くのが遅いという訳でもないのに、私は追いつくのに必死だった。

「何故私が貴様に合わせなければならない」

滑りの良い廊下を休むことなく歩き続けながら、こちらを見る事もせずに石田さんはそう吐き捨てる。こいつ、毛利さんタイプか!

…なんか思い出したらイライラしてきた!

「おら!アーモンド!
…待ていっ!うおお!」
「っ」

ダイナミック桐生タックル!
せいや!と滑りながら低い跳躍と、持ち前の重め体重を駆使して私は石田さんを捕まえ…やべ、勢いで、倒れる!

「ぎゃあああああ!」

…倒れたし、転んだ。
つるつる廊下に額を打ち付けた鈍い音は私ではなく、私の下敷きとなっている石田さんのものだ。

「……貴ッ様!!」
「ひいいい!すみませんすみません!」

慌てて石田さんからどいて逃走を謀ろうとしたけれど、さすがは名武将。すぐに起きて、ひどいことに私の襟首を引っつかんで床に張り倒した。

「うぎゃあ!もうやだ!」
「泣くな喚くな。煩わしい」
「とりあえず手を離してください!」

鬼畜だこの人!
私から手を離すなり、石田さんは偉そうに私を見下ろした。(見下ろすと書いて見下すと読む)

「第一!
石田さんは動きやすい服で長い足、私は動きにくい服で短い足!この差を考えて歩いてください!」

立ち上がり、着物(前に幸村さんがくれたもの)の埃をよく叩いてから石田さんを睨みつける。背、高い!

「それは貴様の身体と格好が悪い」
「あんた私に足を長くして着物脱げって言ってるんですか!ばか!」

理不尽な対応しかしてくれない石田さんは再び進行方向に身体を向ける。さらにそのまま一言。

「黙れ。煩くて敵わん」

まさに、声も出ない。
この自己中心的アーモンドが!
いや、こんな小さなことでこんなムキになってる七海さんも子供だけどな!

「おい、ここが貴様と私の部屋だ」
「貴様じゃなくて七海です!…って、石田さんと私の…?」
「何度も言わせるな。早く入れ」
「おわっ」

私の襟を引っつかんで部屋に入れる石田さん。ふらふらしながら部屋の中に入り、顔を上げた私は驚愕した。

「ひっあっ!何じゃこりゃああああ」
「…いい加減口を閉じろ!斬滅されたいのか!」
「だってこれ!」

程よい広さのそこには、棚が1つと作業用なのか数枚の和紙と硯が乗った机がある。さっぱりとした部屋だ。しかし問題はそこではない。

布団が2つ、ぴったりくっついて並んでいるのだ。

「石田さん、何ですかこの布団!まさか一緒に寝るとかいいませ…ふぐお!?」

パン、という打ち付けるような音は石田さんが手袋?をつけた手で私の口を塞いだ音だ。

「…小娘、この婚姻の目的をもう一度言ってみろ」
「ごっん…ぶへ!
武田軍と、豊臣軍の緊張状態の緩和、和睦…です」

これは事前に佐助さんに擦り込まれたことであり、まさか役に立つとは。

「そうだ。
及び、豊臣と武田の子孫繁栄。これが目的」
「へえー…」

子孫、繁栄…。
子孫繁栄。子供と孫を増やす。

「こ、こ、子作りですか!?」

ああ早く幸村さんのところに帰りたい。ってゆうか予定ではこんなに上手くいくはずじゃなかったんですが。

とりあえず。
責任者猿飛…前出ろ、前だ!


*
その頃別室にて。

「佐助…七海殿は大丈夫だろうか?」
「…何か、上手く行っちゃってるね」


*




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