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「某、武田軍よりお館様の命で参った真田源二郎幸村と申しまする!」

幸村さんの、世界一きゃわゆい声が耳から入って脳に吸収されて。
そんな中、私は緊張した気持ちと一緒に大きく息を吐き出した。

中からは、何だか野太い声とビューティフルな声と、幸村さんのキュートな声。


そう、私は大阪にいます。大阪城なう。
何ともビッグなお城の、一番お偉いさん-つまり豊臣秀吉さんの部屋の前でウェイト。おとなしく、ガチガチで待ってます。

「七海ちゃん、入って」
「あ、はい!」

珍しく本気顔(本気と書いてマジと読む)の佐助さんに呼ばれ、私は粗相のないようにおしとやかに!室内に入って、滑らかに!正座をして、頭を下げた。

「こちらが見合い候補の?」
「はっ!
伊達政宗殿、長曽我部元親殿、毛利元就殿を虜にした、武田の七海姫にござらぁああああ!」

…耳、痛っ。
やけくそ?とばかりな幸村さんの雄叫びに危うく耳がかち割れそうになった。
それにしても素人の料理をプロが料理し直して綺麗に飾ったかのような嘘だ。

「…顔を上げよ」
「…っそ」

(so big…!)
思わず政宗さんみたいに英語まじりになった。だってデカすぎる。もうゴリラやん。どんだけ野性的なの豊臣さん。

「た、武田信玄が娘、七海と申します!お初にお目にかかります、秀吉公」

お館様の名前をお借りするのはかなり痴がましいけれど、今回はご好意で借りさせて頂いている。

「秀吉、どうだい?」
「…むう」

それにしてもジャイアントゴリラ。ド○キーコングやないですか。

秀吉公の隣にいる白髪の色白のマスクメン。すごく気になります。

秀吉公と私が、見つめ合って数分。こういう時は逸らすな、と佐助さんに言われていた気がする。

「…興味深い小娘よ。
半兵衛、三成を呼んでよいぞ」
「秀吉が言うなら。
三成君を呼べ。隣の部屋で待機している」

よくわからないけれど、ファーストコンタクトは…成功?(幸村さんが目をきらきらさせていたハアハア)みたいだ。


「秀吉様、半兵衛様。失礼致します」
「ああ、三成君。こっちに。
…この前話した見合いの候補だよ」
「…」

ゴリラの後はアーモンドか!豊臣軍どうなってんだ!

細身で背の高めな石田さんは、睨むようにこちらを一瞥して、血色の悪い唇を開く。

「全てはお二人方にお任せします」

…何ともクールな対応だ。
2人によっぽど忠誠の念を抱いているのか、それだけ意見して口を閉ざした。

「話してみて嫌なら断っても良い。代わりはいくらでも居る」

白髪のお兄さんが私を一瞥して、はっきりと言う。まあ、そうだけど。

「なっ…!」
「旦那、落ち着いて」

…豊臣軍、個性的な上に中々プライドが高いと私は見た。カチンとくる幸村さん可愛い。ラブ。

「じゃあ、家康君が来るまでいつもの場所に七海君を寝泊まりさせる。…昨日話したよね?」
「はい」
「三成、夕餉になったら小娘を連れてこちらに来るとよい。
半兵衛、良いだろう?」
「秀吉が良いなら僕は何でもいいよ。三成君、あとはよろしくね」

ぽん、と白髪のお兄さんに肩を叩かれた石田さんが全力とばかりに頭を(とゆうかアーモンド)畳に押し付けて元気よく返事をする。
そしてすっと立ち上がった彼は、私を一瞥して、行くぞの一言。

「え?ああ、はい」
「ついて来い。私の部屋に案内する」

そう簡潔に説明され、よく分からないまま私は部屋を後にすることになった。


「…旦那、顔が強張ってるよ」
「おな、同じ部屋……!」


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