!not主人公目線 「お、おは!お初、にお目にかかりまする!七海でございます!」 夕餉を終えた上田城の皆は、それぞれ執務や身支度など個々の時間を過ごしていた。 そして仕事を一段落つけた佐助、風呂上がりの幸村(執務中)、七海は、幸村の部屋で今度の仕事の準備―もとい見合い練習、指導をしている。 「はい、肩の力は抜く。声震えてる。顔が強張ってる。 …真田の旦那も何か言ってあげてよ」 佐助の口からは苦笑とため息が滲むように発され、その言葉は幸村へと振られた。 「…別に、何も見合い候補という設定でなくとも…」 「だーんな。ヤキモチ?」 「さ、さ、佐助ぇえええぇっ」 ガチガチに身体を固め、窮屈そうな正座していた七海は幸村の様子を見てきらきらと目を輝かせた。それから軽々と跳躍し、幸村の首に素早く腕を巻き付ける。 「ヤキモチですか幸村さん!!」 「なっ…!?七海殿、近うござる」 そう叫ぶのは以前と変わらないが、幸村の表情は出会い頭とは大きく変化していた。 慣れない異性に抱き着かれたことによる、ただ困惑しているだけだった表情は、少し照れた、嬉しそうな顔になっている。今も、2人は嬉しそうにじゃれう恋人のようだ。 「何かさあ…旦那も成長したよね」 「?」 「佐助さん!私は!」 「心も身体も変わらないんじゃない?」 「がーん!!」 ごろん、と横になった七海は幸村の膝に頭を乗せてゆっくりと瞼を落とす。 「疲れたからお昼寝ー」 「…見合いの練習、無理はしないでいただきとうござる」 「無理はしてないです。 私、幸村さんと離れたくないですし…全然頑張れます」 (あ、何かいい雰囲気) 忍だけに察しの良い佐助はすぐさま二人の雰囲気を感じ、部屋を出ようとしたが―。 「ぐう」 「七海ちゃん何で今寝るの?!」 「佐助っ、大声を出すな!」 「…はいよ」 大阪への旅は、3日後に迫っていた。 * |