- 下には布団。目の前に広がるのは幸村さんの部屋。幸村さんの匂い。幸村さんの体温。 正直、ニヤニヤが止まらない。 「ゆ、幸村さん…」 「戦で」 「え…?いくさ?」 抱きしめられているため、幸村さんの表情は分からない。ただ、声色がひどく静かだ。私は黙って続きの言葉を待つことにした。 「戦で死に逝く者は、皆冷たい。味方も、敵も、皆冷たくなって死んでしまう」 ふと、幸村さんの声が微かに震えているのに気づいた。心臓をわしづかまれたような感覚に陥り、思わず体をかたくした。 「幸村さん…」 初めてな気がした。 幸村さんは、いつも素直で真っ直ぐで嘘をつけない人だ。しかしこんな本音を聞いたのは初めてな気がする。 「某は、共に戦う皆に支えられてこそ政宗殿のような好敵手と手合わせがする事できる…しかし」 「…しかし?」 「此度、上田城に共に行く皆を、皆を率いるよう自信が…」 「自信…?」 ましてや幸村さんが弱気になっているなんて、弱った幸村さんハアハア。じゃなくて意外だった。 「…失礼致した。こんなことは七海殿に言うことではないと、承知にござる。忘れてくだされ!」 私から少し体を離した幸村さんは、にこりと笑った。私の大好きな可愛い笑顔だ。だけど、だけど、違う。 「幸村さん、寝ましょう!」 「…?」 「えいっ」 私は掛け布団をひきよせて、首をかしげた幸村さんを引っ張りなから布団のなかになだれ込んだ。 「なっ、七海殿…?!」 「私、お館様は本当にすごいと思うんです」 慌てて布団から出ようとしていた幸村さんはその言葉にぴたりと動きを止めた。その隙に私は幸村さんにぴったりくっつく。(どんなにシリアスな状況でもおいしいチャンスは逃がしちゃ駄目だよね!) 「お館様は、武田軍にいるたくさんの人を率いてまとめてる訳です。それだけでもすごいのに、皆さんの……死も、悲しみも目に見て受け止めているなんて、到底私にはできません。 …幸村さんは、今回のことでその一部を担うことになるから、それで、不安なんですよね?」 これは、私なりにお館様について思っていたことだ。布団のなかで私の言葉を静かに聞いてくれていた幸村さんは、小さく笑った。まだ、まだ違う。 「七海殿は人を見る目があるでござろう」 「えへ!褒められちゃいました! …幸村さん。不安なら、除くのなんて簡単ですよ」 一息ついて、私は幸村さんの頬を引っ張った。うすい頬肉を伸ばして、ほっぺがのびた幸村さんの可愛さに悶えつつも話を続ける。 「自信持ってください、幸村さん!あとは、私がどうこう言っていいのか分かりませんが…皆をどうにかしようと考えないでほしいです。皆はきっと幸村さんを支えたいと思ってるんですから!」 へらへらと笑う私には戦の重さは分からない。 けれど、火が消えそうな幸村さんを手伝うことくらいは-できると言いたい。 「七海殿は、某を振り回してばかりでござる」 「え、え?それ嫌い的な意味ですか?!だとしたら泣きます!」 「否」 薄く笑った幸村さんに一瞬不安になったが、どうやら違うらしく私は安堵する。 「なんか、安心したら眠いです…」 「なら某は退くゆえ…」 「ぐう」 …説明しよう! シリアスな流れでしたが、何だかんだ 幸村さんと一緒に布団に入れた私。 ↓ 幸村さんにくっついたまま寝ちゃう。(狸寝入りです) ↓ 幸村さん退けなくなる。 ↓ イエス添い寝! てゆうかあったかいし、本当に眠かったり…今寝たら勿体な…い。 * 「旦那ー、夕餉…って2人共。いつの間にそんなに仲良くなったんだか」 それから数時間後、1つの布団のなかで仲良く眠る2人を見ながら母のように微笑んだ佐助がいたとか、いなかったとか。 (幸せな夢を見た気がしました) # もちろん夢オチじゃないですが! |