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「それはつまりお引越し…ですか?」
「うーん、まあそんな感じ?」

へらへらっ、と笑った佐助さんの軽いノリに私は困惑するしかなかった。
年越しもして、まだ寒さの残る1月下旬。
突然ですが、幸村さんがお父さんから引き継いだ城にお引越しするらしい。何だか武将っぽいなあ、自分のお城って。

「…どうしましょう」
「何が?」
「わ、私はここに残るべきでしょうか…」

え?、と佐助さんが表情を真顔に一変させた。こ、怖い!
私は自分がそんなに変なこと言ったか考えてみたが、そんな失言はしてないはず。

「さ、佐助さん…?」
「いや七海ちゃんならすぐに着いていくって言いそうだったから」
「はい、言おうと思いました
けど、得体の知れない私を快く受け入れてくれたお館様に恩返しをすべきかなあ、と
勿論幸村さんにも恩返し、しなきゃですけどね!体を捧げる勢いで!!ハアハア!」

「最後の一言を除いて七海ちゃんらしくないね」

これでも私、自重して悩んで自重して悩みました!
だって幸村さんのおうちの屋根の下、幸村さんと暮らすなんて私の理性が持ちません!キャ!


「七海!!
お前の想いはそんなものか?!」

そんな不純な妄想で1人気持ち悪く体をうねらせていた私を吹き飛ばすような、そんな声が後ろから聞こえたのはその時だった。

「お、お館様…っ!?」
「七海、若き今こそ好きに生きるが良い!」
「おっ…お館さぶぁああああ!」
「はっはっは!」

ありがとう、お館様!七海は欲望のままに幸村さんについてきます!
何だか悩みまくって出した決心をすごく簡単に曲げたけど、別に私軽くないんだよ!お館様の言葉の力が素晴らしいんだよ!

「お館様のことは…、死んでも、忘れませんっ…ううっ!」
「泣くでない七海!気合いだ!!」
「ぅおやかたさぶぁあああっ」

声を張り上げて互いに怒鳴り合う私とお館様を、苦笑しながら止めたのは佐助さんだった。

「上田城にくるなら、旦那にまず話、ね?」


*
私と佐助さんは、幸村さんと話をするために幸村さんの部屋に歩を進めていた。てくてくと綺麗な廊下を歩きながら、私は気になっていたことを質問することにする。

「幸村さんのお城…上田城?には誰がいるんですか?」
「真田忍隊はもちろん、小山田の兄さんとか兵もたくさん移動することになってたかな」

「佐助さんも来るんですね」
「もちろん」
「チッ」
「何その反応?!」
「あはは、嘘です!
本当は嬉しいですよ」

多分、佐助さんいないとまとまらないしね!


「…七海ちゃん」
「はい?え、また真顔!怖い!」
「普段からそーゆう可愛い笑い方しなよ」

佐助さんの、大きすぎず堅すぎずな手が私の頭をもふもふ撫でた。こういうの何だっけ、あれだ。普段との的な意味で。
(ギャップ萌え…?)

「いつもの笑い方は変態くさいっていうか」
「と…」
「ん?何?」
「ときめいたああああ!!
すいません幸村さあああん!」

桐生七海、一生の不覚!
こんなの好きな人の親にときめいたようなもんです!てゆうか頭撫でられて微笑まれただけで、とき…ときめいた(認めたくない)なんて…っ!

「猿飛手前このやろううう!」
「え、何で!?ちょ、七海ちゃん待っ…!」

ばきり。私が佐助さんを殴り飛ばしたのと、廊下を歩いていた幸村さんが私達を見つけて首を傾げたのは同時だった。


*
(七海殿、いかがいたした!?
佐助が何か…!?)
(幸村さあああん!七海は悪い子です!)




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