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「七海、起きろ」
「…う?」
「着いたぜ」

何だかお尻もあまり痛くないし、心地好い揺れにどうやら寝ていたようだ。起きなければ、と目を開ける。

「奥州…」
「降りられるか?」

空は少し暗い。もう日暮れのようだ。ここに来るまでに2、3日かかっているんだから、幸村さんのお見合いはもう終わったのかな…?

政宗さんの手を借りて馬から降り、私は大きな城を見上げた。で、でか!馬とか走りまくりだよ!?

「すごいですね!わあ、中に畑がある!」
「それは小十郎の趣味だ」
「へえー」

政宗さんが門の前まで私を引っ張っていく。すると部下らしき人達がわらわらと集まってきた。

「筆頭ー!小十郎様!お帰りなさいっス!」
「さあさあ筆頭の嫁さんを紹介してくだせぇ!」

(みんなテンション高い…)
てゆうか皆ヤンキーのような風貌してる理由が分からないんだぜ!

「梵に小十郎さん、お帰り
城は平和だったよ」
「Thank you、成実
助かったぜ」
「いいって!
それより梵の嫁ってその子?」
「よ、嫁!?」
「あぁ」
「ええ!?」

何か違う!と政宗さんを睨むと、悪戯が成功したときの子供みたいな顔して笑った。

「ね、名前は?」

政宗さんの兜のバナナみたいなのをグイグイしていると、政宗さんと同じ髪色をした若いお兄さんに声をかけられた。チャラそう!

「七海です」
「七海ねー
俺は伊達成実!」

よろしく、と笑った彼はどうやら伊達さんの血縁者らしい。人懐っこい笑みを浮かべて、私の頭を撫でた。

「おい成実、あんま触んな」
「はいはい!
まあ立ち話も何だし、中入んなよ」

その言葉で、私達は城の中に入って行った。


*
「そ、某は真田源二郎幸村!
よろしくお願い申し上げる!」
「先程ぶりです幸村様
私は大谷吉継が娘、竹林院と申します
よろしくお頼み申しまする」

3日前。
甲斐では、 幸村のお見合いが行われていた。

「そのっ…父上はどのような?」
「父は豊臣で秀吉公に仕えております
ただ体が悪いゆえに、本日は同席は…」
「さ、左様でござるか!早く良くなるようにお伝えくだされ」
「お気遣い、感謝致します」


沈黙。幸村はただ慌てながら、お世辞にも良いとは言えない頭を必死に回していた。

「幸村様は、お見合いは初めてでございますね?」
「なっ…なにゆえ!?」
「女慣れしてない感じがしましたゆえ
秀吉公右腕の半兵衛様なんか、すごく女慣れしている感じがするんです」
「そ、それは見習わねばならぬ!」

無邪気な笑顔でグッと拳を握った幸村に、竹姫はくすくすとおしとやかに肩を揺らして笑った。

「幸村様、私に…いや“女”に興味がないでしょう?」
「っ貴殿は読心術を?!」
「そんな力はありませぬ!
ただ、普通はお見合い中に他の男の方のお名前を出すのは無礼です
だけど幸村様は特にお気になさらなかったようだったもので」

ポカンとする幸村に笑いかけ、竹姫はすらすらと語った。そして茶を口に運ぶ。
それから、俺はやはり未熟っ!などと小さく呟く幸村に声をかけた。

「私には、お慕いしている方がおりまする
幸村様は?」
「…そ、某は、」
「…いるのですね!せっかくですし、お話いたしましょう」

七海のことを思いだし、無意識に赤くなった幸村を見て竹姫は嬉しそうに笑った。
竹姫がいくつか幸村に質問を投げはじめる。しかしながら、彼の頭は七海のことを考えるので精一杯だった。


(七海殿は今頃…)
(あー…ねむい…)


*
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