- 「おはようございます、お館様!」 心配そうな幸村さんの表情を振り払うように、私は笑顔でお館様に頭を下げた。お館様も笑顔で返してくれた。 私の後ろには佐助さんも続いて入ってくる。 「んーとじゃあ早速なんだけど… 七海ちゃん、奥州行きたい?」 3人がそれぞれ座って落ち着いたところで、佐助さんが先程の紙を私に差し出しながら言った。 「奥州?」 き、北のほうですよね、奥州! 何でそんなものがいきなり、困惑しつつ紙を受けとって見てみる。 読めないけど、何となく内容は…感じとれるかな? そして最後の伊達政宗の字で、何となく話が分かった。 「政宗さん、ですよね」 「そうだよ 城に遊びに来ないかって誘い 七海ちゃん、行きたい?」 正直、急に言われても何ですと?!とゆう感じだ。お館様のほうを見ると、優しい笑みを浮かべていた。 「儂は七海が行きたいなら構わん」 「…私、は」 「返事来たらすぐに迎えに行く、だって」 佐助さんの言葉に揺れていた心が固まる。 “一番早い見合いは明後日” 「行きます」 「え?」 「お館様、紙と筆貸してください!」 「うむ」 「ちょ、七海ちゃん」 筆を乱暴に持って紙に一言書いた。“行く”と。 「お館様、七海は行って参ります!」 「うむ!楽しんで来るといい!」 「佐助2号さん!これ奥州まで運んでください!早急に!」 「ちょ…!」 ちょうど歩いていた、佐助さんの部下である仲良しな忍さんを呼び止めて、その紙を預けた。早くやらないと、また決心が鈍りそうだったから。 こうしてお館様公認で、私の奥州旅行は決まった。 「七海ちゃんが行くなんて、俺様びっくりだなー てっきり旦那と離れるのが淋しい、とか言って行かないかと思ったんだけど」 お館様のお部屋から出ると、佐助さんがあくまで笑顔のまま私に語りかけた。 でも僅かにピリピリとした口調で、つい怪訝な声で返してしまう。 「…佐助さん、はっきり言ってください」 「あはー、バレてた? じゃあはっきり言うけど、奥州行かないで欲しいんだよね …何?竜の旦那に心変わり?」 私を壁に追い詰めて来る佐助さんの雰囲気が、突然変わった。怖い、けど。 「私は幸村さんが大好きです」 「なら…」 「だから、お見合いしてるとことか見たくないんです!」 私の言葉に、佐助さんの表情が固まった。そして“やっぱりバレてたかあ”と小さく漏らす。 「それに、私がいると、よくわかんないですけど、幸村さんの邪魔になる気がするんです 少し、離れてみようと思うんですよ…」 「…七海ちゃん」 「だから、ほっといてください!!」 突き出した私の膝は、佐助さんの男の勲章に見事にヒット。さらに振り上げた手(拳)は勢いよく頬にめり込んだ。 「っ…!」 「あれ…佐助さん!? 佐助さん、しっかりしてください!佐助さああああん!」 (気絶させてしまいました) * マイエンジェルユッキーがマジ空気 |