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毛利さんが私を踏む。毛利さんが私を罵る。毛利さんが私の上に座る。毛利さんが…


「ぎゃぁああああああっ!」

悲鳴。私は悲鳴をあげた。
汗だらだらで真っ青な私。悲鳴にびっくりして慌てて部屋に来てくれた、通りすがりの小山田さんが背中をさすってくれた。
すかさず、これまた通りすがりの女中の方が水を運んできてくれた。

「七海様、落ち着きましたか?」
「はい、すみません…」

汗びしょびしょの私を見て、女中さんが代えの服を持ってきてくれるらしい。では、と立ち去る小山田さんに頭を下げて私はふう、と息を吐き出した。


「にしても、何で私寝かされてるんだろ…」

よく考えたら毛利さんに罵倒されて以降の記憶がない。タイミングよく着替えを運んできてきてくださった女中さんに聞いてみることにした。

「あの、毛利さんってもう帰りましたか?」
「はい、少し前にお帰りになられましたよ」

女中さんは笑みを絶やさないまま、手際よく私を着替えさせてくれる。

「えっと、じゃあ私は何で寝てたんでしょう…?」
「確か、幸村様が運んで…」
「幸村さんっ?!」

ええ、と女中さんは微笑んだ。随分穏やかな人だ。私の着物を着付け終わると、失礼しますと一言かけてから私の髪のハネを直してくれる。

「わわ、ありがとうございます!」
「ふふ、幸村様は庭で鍛練なさっていましたよ」
「っ、行ってきます!」

とても良い人な女中さんに頭を下げて、私は庭まで走った。

*
「幸村さーん!」

庭には、1人で熱心に槍を振るう幸村さんがいた。私に気づくと汗を拭いながらにこり。

「七海殿!いかがいたした?」
「あの、私を部屋まで運んでくれたんですよね…?
ありがとうございました!」
「大したことではないゆえ!
気にしないでくだされ」

ああ、本当に幸村さんは優しい…!どこぞのオクラとは大違い…ああ、そういえば!

「わ、私何で運んでもらったのか覚えてないんですけど…幸村さん、知ってますか?」
「某は元就殿から、疲れていたのか寝てしまったとお聞きして七海殿を運んだ次第!」

…そうだ、思い出した。寝てしまったなんてのはもちろん嘘で、謎の関節技×罵声で私の意識は吹っ飛んだのだ。ちょ、私マジ可哀相。

「あ、七海殿
元就殿に渡すように頼まれた書でござる!」

幸村さんがごそごそと服を探り、何処からか出した紙。毛利さんから、と聞いた時点で嫌な予感しかしない。

「ありがとうございます…」

受けとって開いてみるも、案の定何も読めない。捨て駒、とか何となく分かるけど面倒臭いしあとで佐助さんにでも読んでもらおう。

「七海殿…失礼承知でお聞きいたす」
「?何ですか?」

突然、意を決したように声を張り上げた幸村さん。私は何事かと幸村さんを見上げて、言葉を待った。


「元就殿と七海殿は…っ恋仲にござるかっ?!」
「違いまああああああす!」

反射的に、瞬時に反応できた自分はすごいと思う。私はそれを全否定して、幸村さんにしがみついた。(さりげないボディータッチ!)


「私が恋仲になりたいのは、幸村さんだけです!」

凄むように言う私に対して、幸村さんは真っ赤になりながら息をひとつ吐いて小さく呟いた。

「そうで、ござるか」
「はい!」

何故か笑顔になった幸村さんを見て、私も笑った。


*
「佐助さん、何て書いてあります?」
「顔に阿呆加減が滲み出た、根性なしで貧相な我が駒よ
次に我の目にかかるまでに、様付けをするくらいの頭は用意しておくがよい
この役立たずが
…元気だして、七海ちゃん」

(オクラくたばれ…!)


*
毛利編短いってゆう…!




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