- 「伊達。チャリ乗せて」 柔らかな夕焼けが、赤く道端を濡らしていた。 部活帰りの学生達は赤く照り濡らされた道路を歩き、帰路についている。 そんな中。 学校一の色男といわれる伊達政宗を引き止め、小さい身体で踏ん反り返っていたのは心だった。 「Ah…?minimumじゃねえか」 「ミニマム言うな!! よし、お詫びも兼ねてさっさと乗せなさい」 女子高校生の中でもかなり小さい部類に入る彼女は、政宗の制服をぐいぐいとつまみながらじゃれるように怒る。 最近夏服に変わった制服。薄いワイシャツを引っ張りながら主張してくる心の頭を手の平でぐりぐり押す政宗の顔には、穏やかな笑顔が浮かんでいた。 「Ok、いつもんとこか?」 「うん。伊達がママチャリに変えない限り私はずっとカゴの中」 政宗は自転車から降りると、ひょいと心の身体をカゴに入れる。慣れたように脚と上半身を出し、体勢が安定したところで自転車が発車される。 湿った生暖かい風は2人の夏服や髪を揺らし、ふわりふわりと帰路を辿った。だてー、と間延びした声が、やはりふわりふわりと漂う。 「やっぱり今度からママチャリで来てよ。片倉さんの茶色のママチャリがあったじゃない」 「minimumがカゴに入れないくらいBigになったら考えてやる」 「うわあ伊達爆発しろー」 決して長くはない脚をカゴにガシガシぶつけて講義する目の前の小さい生き物を見て、政宗は運転しながら小さく鼻を鳴らした。 #君のいる宇宙をちょうだいよ title by みみ様 |