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放課後の屋上は、私と平和島君の2人しかいなかった。
胸に溜め込んだ微かな緊張を、春風が揺らす。


「お前、告白されたんだってな」

ぽつり、その言葉はまるで軽く投げられるように落ちてきた
今まで世間話していただけに、いきなりそんなことを聞かれてびっくりした。

「何で…
あ、臨也?」

世間的に言うと、たまに話すクラスメート程度の仲の平和島君が何で私のプライベートを知ってるのか疑問に思ったが、すぐに幼なじみの顔を思い出して納得した。

「おう…
もう返事したのか?」

(臨也の名前出して怒らないなんて珍しいなあ)

「即答だよ」

ああ、私はまた何でこんな無愛想なのかな。
もっと可愛いくなりたい。
平和島君に、好かれたいのに。

「付き合うのか…?」

きゅうっと、平和島君の真剣な表情に胸が締め付けられた。
かっこいい、なんて思ってる自分が恥ずかしい。

「つ、付き合わないよ!!
告白っていっても臨也だから…冗談だよ」


それを聞いて難しい顔をした平和島君が空気とにらめっこするのを、私はじっと眺めた。

もっと、話したい。
周りの女の子みたいに笑顔で明るく素直に喋りたい。
ぼんやり考えていれば、何だかテスト期間のときみたく憂鬱になってきて。

「苗字」
「な、何?」

「俺は名前って呼ぶから、お前も俺のこと名前で呼べ」
「え…!?」

私は夢見てるのかも。
大好きなひとから、名前で呼ばれるなんて。

「嫌ならいいけどよ」
「ぜっ全然嫌じゃない!
ただ何でって思って…」

立ち上がった平和島君が、少し、赤い顔を手で隠してこちらをぎっと見た。

「察せよばーか」


くしゃ、私の頭を一度撫でて平和島君はどこかへ行ってしまった。
残されたのは真っ赤になった私と、恋の憂鬱だった。


(全然掴めない君が)
(愛しくてたまらない)


*
処女作
参考曲:メ/ランコ/リック
鏡/音リン




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