- こつ、こつ。 薄く汚れたローファーを鳴らして、耳にはヘッドホンをぶらさげて。 私は学校帰り、池袋の街を歩いていた。 耳元で奏でられる好きな音楽は周りの世界からの音を遮断しているため、私はあることに気がつかなかった。 「―おい!!」 「わ、と?!」 ぐうっと、腕の肉に力強く指が食い込んでいる。最初こそは驚いたが、振り返り、掴んでいる人物を見てつい顔を綻ばせてしまった。 「しー君!」 「お前な、それ危ねぇよ」 しー君はいつもみたいに私の頭をくしゃくしゃ撫でて、首にかけられたヘッドホンを指差す。 「そうかな?」 確かに周りの音が聞こえないのは危ないとは思う、けど。やめようと思ったことはない。 「もし後ろから近づかれても分かんねえだろ? あとそれ。スカートも短いだろ」 ひらひら。 揺れるプリーツスカートを見てしー君はむすっとする。でもこれは決して上げてる訳ではない。来良のエロ校長がこんな作りにしたのだ。 「やっぱり防犯ブザーとか…」 ぶつぶつと、今だに私の身を案じてくれるしー君。優しいなあ。 「心配性だね、しー君」 「当たり前だろ。名前に何かあったら手出した奴はめらっと殺す」 グッと拳を握りしめて犬みたい(と言ったら語弊があるが)に唸る彼に私はぎゅっと抱き着いた。 周りにいる通行人A、B、いろんな人が私達を視界に入れては、逸らす。 「…名前?」 「ブザーなんていらないよ。だって危なくなったらしー君が来てくれるから!」 ぎゅうぎゅう。 溢れるばかりの大好きをこめてもう1度抱き着くと、しー君は照れたようにまた唸った。 #ふわふ・わーるど title by ashelly様 420の日記念! |