!暴力表現


「本当、君の目は嫌いだよ」

目の前の男が、路地裏に座り込むわたしを見下すように吐き捨てた。わたしの嫌いなやつ。折原臨也。
九十九屋はいつもいい仕事をくれるけど、臨也を挟んで報酬を渡すから嫌だ。いらいらする。


「……」

無言でわたしが手を差し出せば、臨也はため息をついて諭吉を何枚か押し付けた。当然だ、こちとら血だらけになって仕事したんだから。

「毎度あり」

臨也と会話なんかしてたら数分でわたしは禿げてしまう。だからすぐに立ち去ろうとしたけど体が動かない。骨折れてる。あいつら、女の子の骨折ったのかあ。

「むかつく…」
「俺が?」
「あんたは常にむかつく
いま言ってるのはさっきの男達」

お腹、痛い。座ってるだけでつらい。あー、やばいよ助けて誰か。

「…しずお」

携帯で、静雄に迎えに来てもらおう。確か今日は仕事お休みだから。セルティは仕事だろうし。
そう思って、息も絶え絶えに取り出した携帯。それはすぐに臨也によってわたしの手から蹴り落とされた。
カン、と大して新しくもない携帯がコンクリートにぶつかった。ぱらぱら破片が飛んでいる。

「なにするの」

臨也は不機嫌のようだ。
むすっとあからさまに顔を歪める彼は、事もあろうかわたしの携帯を勢いよく踏み付け、粉砕した。

「……あんたなんか嫌い」
「俺は君の瞳が嫌いだよ」

話は変わるけど、わたしの瞳は金色だ。濁った金色。生粋の日本人のわたしが何故こんな色の瞳なのか、昔から気味悪がられた。けれどさすがに高校生にもなってからかう人はいない。

「あんただって赤じゃない」
「別に俺は色の話をしてる訳じゃない」
「じゃあな、に…」

ぱき。
人間の体は弱いものだ。
特に乳製品が嫌いなわたしの骨は、脆いのかも。

「っぅあああっ!」

可哀相なわたしの小指は、臨也に踏まれて奇妙に曲がっている。
痛みは、強すぎると人の意識を飛ばす。目の前がもやもやして、けど目の前のゲス男はわたしをまだ痛める。ぐうっ、とわたしの頬を片手でわしづかみにして愉快そうに笑った。

「その俺を嫌悪する瞳が嫌いだよ」
「あれ……、あんた、人が嫌がる顔すきじゃない、の」
「名前にそういう瞳されると苛々するんだよね、本当意味わかんない」

こっちだって意味わかんないさ!
わたし悪いことしてないのに、何で指折られなきゃいけないんだ!

「う……」

臨也は指を折って何か満足したのか、わたしを持ち上げて歩き始めた。タクシーを止めて、運転手に告げている場所は多分、新羅のところ。

「いざや…」
「喋んないほうがいいんじゃない?」
「しね」
「今度は左やってあげようか」

臨也の手がわたしの左薬指を握る。
にっこり笑ったその顔は、まるで悪意の塊だった。


*
あうー




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