こんな男を少しでも信じたのが間違えだったんだ、そう思っても既に遅い。
私は両手を封じられ、体の自由もないのだから。

ぱしゃり、上から何かがふってきて自然に瞼が降りる。
そうっと目を開ければ私の上に跨がった黒い男、折原臨也が笑いながらこちらを見ていた。手には何かのボトル

折原臨也の手が私の頬に触れれば、ぬるりと不自然な位滑らかに滑った。
先程かけられた液体が原因のようだ。

「…あ」
「もしかして何されるかわかった?」

Yシャツに付けられたリボンが、ぷつりとナイフによって虚しく外される。
勢いよく開けられたYシャツのボタンがはじけとぶのを見ながら、自分の体が震えているのに気づいた。

「そんな怖がらないでよ名前ちゃん」

首の皮の上を鋭い刃が切り裂いていくのを感じる。
それをやっている張本人は、笑いながら“首輪みたい”なんて。


「…やだ、いや…!」

助けて、静雄さん静雄さん静雄さん嫌だ嫌だこんなのは!
暴れてみても、縛られた手首が痛むだけ。

「煩いよ」

こんな噛み付くようなキスは嫌。
あの人の優しいキスが恋しくて、悔しくて涙が滲んだ。
息が苦しい、口内を侵す水音が脳を侵食していく。
せめてもの抵抗で唇を思い切り噛んでやれば、ゆっくりと唇が離れた。

「名前ちゃん、自分の立場わかってる?」
「やだやだ…静雄さ…あっ…」

スカートの中に侵入した手は迷いなく下着をずりおろした。
私の体が強張るのと同時に、臨也さんが満面の、最悪な笑顔を見せた。


「大丈夫、痛くないようにこれ使ってあげるから」
「や…」
「どうせ抱くならお互い気持ちいい方が良いでしょ?」
「しず…」


「じゃあ、始めようか」

にっこり、その笑顔は私を絶望へと追いやった。


(快楽が苦しい)
(そんな君が愛しい)

*




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