「あれ、君まだ生きてたの」
「…」

返す言葉も、出ない。
悔しいことに頭の回転の遅いわたしは言い返すことができなかった。

「もう死にたくないの?」

にこにこと端正な顔立ちな笑顔を張り付けたヤツの目は悪意でいっぱいだった。ああ、もうこんなヤツに会うなんて今日は厄日だ。

「折原…」
「やだなあ名前ちゃん。昔みたいに臨也さんでいいよ。昔、楽しかったじゃないか」

態度も言動も、全てが白々しい。
こいつと話してるとわたしは頭がパンクしそうになる。

折原臨也は嫌悪を示すわたしを楽しそうに眺めて、わたしの頬に手を伸ばした。


「……」
「俺、名前ちゃんとのセックスは結構好きだったんだよ?」

昔こいつは、自殺を考えていた中学生のわたしを拾って散々いたぶった。こんなノミ蟲に依存していた自分も馬鹿だけれど、中学生の純粋なわたしをあんな風に裏切った折原臨也も相当ひどい、と思う。


『飽きちゃった。もう死んでいいよ』

どれだけショックを受けたことか。純粋な恋心のようなものも、処女も、生きたいという欲求も全て奪われた。
わたしは確か、泣きながら折原を怒鳴りつけた。しかしこいつは訳の分からない理論を話して笑って。しまいにはわたしの胸をナイフで切り裂いた。ああ思い出すだけで死にたくなる!


「…折原死ね。焼死しろ溺死しろ圧死しろ」
「怖い怖い!別に俺は悪いことは言ってないだろ?」
「わたしは中学生の頃普通に暮らしてました貴方みたいな人知りませんさようなら」


はいストップ、軽やかな声は離れようとしたわたしの手首を掴んだ。
路地裏まで引っ張られる間、必死に静雄さんを探したけれど今日に限って居ない。


「…わたしを殺すつもりですか」

街の雑踏が何処か遠くに聞こえる路地裏に入るなり、ノミ蟲はナイフを取り出しやがった。そしてわたしのYシャツに刃をあてる。

「そんな勿体ないことはしないよ」

ビーッ、とはかない音をたてて破れたYシャツ。ヤツが何をするつもりか分かったわたしはじわじわと脂汗をかいてきた。

「傷、やっぱり消えてない」

…こいつ、昔の傷えぐってわたしで遊ぶつもりだ。

たくしあげられた下着。露になった心臓の上の皮膚には縫った傷がある。折原が、つけた傷。

「……」
「ねえ、君は毎日どんな気持ちでこの傷を見ているのか俺が当ててあげようか?
これを見る度に思い出したくもない俺のことを思い出して、嫌悪する。嫌悪しながらも昔のように俺を完全に悪人だと思えなくて、どこか期待してしまう。そんな自分が嫌でどうしようもないんだよね?」

…最悪だ。うずまき管とか爆発して死ねよ本当。

「当たってる、って言ったら満足ですか」
「うん、本当に君は捻くれたね」
「誰がそうさせたんですか」
「俺?」

笑いながら、目の前の顔はわたしにキスをした。またそうやって、わたしを陥れるつもりだろうか。

「…良いです、臨也さん。セックスをしましょう」

ならば、今度はわたしが麻薬を焼いてやる番だ。
至極満足そうな臨也さんの唇に噛み付きながら、わたしは復讐実行を誓った。


#墜落する為だけに作られたヘリ

*
なんか内容が薄い
深夜のテンション
title by 剥製は射精する様




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