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!ヒロイン→腐女子
BL発言注意


下校時刻となった昇降口、たくさんの生徒が外へとでていく。

「うわあ、雨降ってる…」

名前が友達にぼやくのを俺は少したけ離れたところで聞いた。外を見れば土砂降りの雨が降っている。鞄に手を入れて傘を探せば、携帯や弁当箱にぶつかるだけで見つからない。そういや朝入れなかった。
ついてねぇ、小さく舌打ちをして仕方なく雨に濡れながら帰ろうと外に出た時、はしっと何かが俺の服を掴んだ。

「静雄、傘ないの?」

相変わらず大量の薄っぺらい本を抱えた名前が俺の顔を覗き込む。

「天気予報で晴れっつてたからよ」
「…入る?」

思わず固まってしまった。
上目づかいに折りたたみ傘を差し出した名前は、俺の返事を待たずにパサリとそれを開いた。


「…しょうがねえから入ってるよ」
「何それ静雄ツンデレ?
臨也じゃなくて私でごめんねー」
「気色悪いこと言うなよ」

パチッと名前の額をはじいて、傘をとる。額を押さえた名前が行こっか、と笑ったのをきっかけに俺達は歩きだした。



「おー…相合い傘とか緊張する」

名前が少しだけ表情をかたくして頬に手をあてた。

「彼氏とかと、しねえのか?」
「彼氏なんていないよー
私、三次元の男の人あんまり得意じゃないからねー」
「…お前…」

本当にこいつは変わってる。開いた手で頭をわしわし撫でると、ううっと喚き始めた。

「ぷっ…小せえな、お前」
「なっ…!静雄がでかいんだよ!
最近臨也も静雄も、あげくの果てには京平までも私のこと馬鹿にしてさ!」

俺の方を見上げてキイキイと喚く名前を見ているとついからかいたくなる。こいつは小動物みたいだ。


「おい、あれ平和島じゃん」
「相合い傘してるぞ…!
相手は?」
「苗字だよ、2組の」


2人で世間話に興じていると、近くを歩いていた来神学園の生徒の声が嫌でも耳に入ってきた。

「おい、名前…
何か、勘違いされてっぞ」
「いいよいいよー
誰が何と言おうと…」

一瞬の間。
次の言葉を息を殺して待てば、名前が今日一番の笑顔を浮かべて口を開いた。


「静雄は臨也の恋人だもんね!」


メキッと奇妙な音をたてて傘の柄が曲がった。
周りの人間がそれを見てそさくさと離れて行くなか、名前だけは相変わらず何か世迷い事を話している。

「静雄と臨也って正直何処までいってるの?
キスした?まさかもう体重ねた感じ?うは、R18展開ktkr!ベッドでずっこんばっこん的な?」

バキバキッ!
駅のホームに入ったちょうどその時、鈍い音がして傘が折れた。
よくここまで持ちこたえた。

「名前ちゃんよお…」
「ん?」

いらつくいらつくいらつく!
いらつきやがる!気色悪ィ!
一発キレそうになって名前の方を向くと、本当に楽しそうな無邪気な笑顔が返ってきた。


「…っ何でもねえ」

一気に怒りがなくなってしまった自分に頭を抱え、俺はダメになった傘をごみ箱に捨てた。


#彼女の笑顔には勝てません

(お前…その変な思考直せよ)
(え、無理無理!)

*
多分昔、腐女子な友人に捧げたやつ




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