- 夕方の池袋。 学校帰りの学生や、仕事帰りの社会人がせわしなく街をうごめく。 私もその人波のなかの1人。 用があるという杏里と別れて、帝人と2人で再び歩き始めた。 「帝人、今日確か帝人の好きな漫画の発売日じゃない?」 「あ、そういえば」 そうだね、と帝人がぽんと手を叩きながら笑った。幸いここはアニメイトの近くだ。 「買って来ちゃえば? 私喉渇いたからジュース飲んでるよ」 「え?あ、いいの?」 遠慮する帝人の肩を押してアニメイトに押し込むと、私は近くの自販機に小銭を入れた。 さて、お茶と紅茶、どちらにしようか。 「そんなに悩むことですか?」 ピッ、ガタン。 後ろから突然伸びてきた腕。 その手が、自販機のボタンを軽く押した。 「青葉くんか」 変な人じゃなくて良かった。 青葉くんは自販機からコーヒーを取り出して、にこりと笑った。 「名前先輩はコーヒー飲めます?」 「大丈夫」 勝手に押してすみません。 謝る青葉くんに気にしないように言ってから、私は近くの外壁に寄り掛かる。 青葉くんはなぜか私の目の前に立って、また笑った。 「青葉くん?」 「名前先輩」 ぎゅうっ、と手首を掴んで。 また、彼は笑う。 横目に自分の先輩、ダラーズのリーダーをとらえながら。 「俺は名前先輩が嫌いです」 *愛憎アイロニー (好きだけど憎い) (好きだから憎い) * 素敵なお題は 207ベータ様 よりお借りしました! |