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「好きです、付き合ってください!」


「させるかっ…」
「だアホ!黙れ!」

知ってますか皆さん。
伊月先輩は、ヘタレにも優しい、そして美しい!私の大好きなアイドルなんですよ!

「伊月にバレたらどうすんだ」

で、今私の口を塞いで茂みの中から体育館裏の青春の一ページを眺めているのは、主将の日向先輩。二重人格。怖い。

「すすすすみません主将クラッチはやめてクラッチは」
「いいから静かにしろ!」

そう、低めの植え込みを挟んだ向こう側では伊月先輩が告白されているのだ。
まさにアイドルの熱愛発覚!許さん皆の伊月先輩だ!

…相手の子は、可愛い。胸もでかい。てか胸!胸大きい!

「D…?」
「Eだろ…」
「主将ってわりと最低ですよね」

そういえばせーくんは下ネタはあまり言わなかった。まあ話を振られれば、白は微乳だよね、とか一言嫌味を吐き捨てたが。(死ぬほど余計なお世話である)


「胸だけじゃなく、あの子、顔可愛いですよ」

華奢で小さくて、可愛いくて巨乳。折れそうな位細い腕、腰、脚。
長所は指折りに数えるときりがない。主将は顔をしかめて女の子を見た。

「化粧が濃い」
「もう高校生ですからね。それくらいはよくありません?」
「んー…何だマネージャー、伊月が誰かと付き合うの嫌なんだろ?やけに庇うな」

デスヨネー。
私だって極力、伊月先輩に恋人なんて阻止したい。ショックで泣く。数少ない、私を甘やかしてくれる人なのに。

「…だって、明らかに私より華奢で可愛いくて巨乳で細いじゃないですか…!何も言えませんよ…」

顔を触る。凹凸の浅い日本人顔。豚のような贅肉。髪は何の面白味のないポニーテール。ネイルも化粧もしてないし。当然、胸もEなんてない。

「…馬鹿かお前は!」
「主将!うるさいぜ、ですよ!」

何故か火神君口調で、慌てて主将の口を塞ぐ。草むらに倒れ込んだ主将の上に乗っかると、すぐに反撃があった。

「うるさいのはお前だ、宇佐美…!」
(く、クラッチ…!)

パァン!!!と言う弾けるような音。私の口が塞がれた音だ。お互いの口を塞いで、取っ組み合いをして何をしているんだろう、私達は!

「んがぁあっ…!」
「こんの…!宇佐美、お前ヘタレにも程があるだろ!」
「日向先輩に言われるとムカつくぜ、です!」
「お前それわざとか!」

夏服下ろし立てなのに汚れたらどうするんだ!制服は純白、下は砂!全く日向先輩はデリカシーがない!


「そうやって、いつも普通で居れば良いんだよ。白ちゃんは、自分を過小評価しすぎ」

日向先輩とは、違う声。
今ではすっかり嗅ぎ慣れた匂い。鼻が良い私は、すぐに誰が側に来たか分かった。

「い、伊月先輩!告白!」
「断ったよ。
ほら、いつまでも日向の上なんかに乗ってないで、こっちおいで」
「伊月先輩ぃいいい」

マイエンジェルマイオアシス!誠凛には真ちゃんが居ないから心配だったけど、先輩がいれば癒される!

「自信持ちなよ。
俺は白ちゃん、可愛いいと思うよ。ねえ、日向」

話を振られた日向先輩は、すっごい微妙な表情だ。正直でよろしい。学ランの埃を落ち着かない様子で払い、こちらを見ずにぼそりと。


「…宇佐美が自分で思ってるほど、お前はひどくねえよ」
「そこはお世辞でも褒めてくれ、ですよ」
「褒めてんだろうが!あとその口調やめろ!!」

ぐわーっと半分クラッチに入った日向先輩を、伊月先輩の背中に隠れて追い払う。伊月先輩が振り向いて、日向先輩を指差しながら笑う。中途半端にヘタレだよな、と。さんさんと照りつける太陽の下で、私は思わず吹き出した。


#お揃い発覚だぜ、です






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