_ ※中2時代。 何かとんでもない状況なう。 昼休み、赤司様のクラスへ向かったらとんでもない状況になったのだ。 …順を追って説明しよう。 教科書忘れた。 ↓ さつきちゃん、黒子君、紫原君は同じクラス。 ↓ 黄瀬君(隣のクラス)に借りるとか自殺行為だわ。 ↓ 青峰君は多分持ってないな! ↓ 他に隣に知り合いはいない。(マンモス校め…) ↓ ならその隣! 友達いる! ↓ 真ちゃんもいる!(歓喜) ↓ …せーくんも、いる。 まあ仕方がないか! と、数学の授業を聞き流しながら思案し、休み時間。私は隣の隣のクラスに向かった。 「あ、宇佐美っち!やっほース!どこ行くんスか?」 「黄瀬君、おはよ。少し真ちゃんに用があるんだ」 「そっスか!いってらっしゃいっス!」 ふう。 少し話しただけなのにあの女子の視線だ。部活の友達と話しただけなのに、この仕打ちである。教科書とか絶対借りれない! 黄瀬君達のクラスを通り過ぎ、さて。真ちゃんは背が高いから一番後ろの席だ。廊下側の、入り口に一番近い場所。便利! 開きっぱのドアから真ちゃんを呼ぼうとしたその時。 「ねえねえ、赤司君彼女居るんでしょ!」 「バスケ部のマネージャーの子で、宇佐美さん!」 「あ、私知ってるー」 真ちゃんの前の席で行われる数人の女子の質問攻め、せーくんの微笑。そして私の名前うわあああ…! 「どんな子なの?」 「超ヘタレでうさぎみたいな奴だよ」 私を知っていると言った女の子が返事をする前に、せーくんがそう口を挟む。つかおい!せーくんお前前出ろ前だ! 「白…?」 自分の名前が出てきた驚きと、せーくんへの恐怖から思わず私はへなへなと体育座りをして、ドアに張りついていたのだけれど。 「し、真ちゃん」 やっほー、という挨拶は自分でも驚く程に潜めた声音であった。 前の席のせーくんを見て察したのか、真ちゃんは気の毒そうに何も見なかったように装ってくれた。 「えーなにそれ!やっぱり付き合ってるの?」 「ご想像にお任せするよ。どうしても気になるなら、白に聞いてみるのも手だけど」 手 じゃ ね え よ …! 何なんだせーくんは人で遊びやがって! あと猫かぶりしすぎ!それじゃただのイケメンじゃないか! 「おい宇佐美、パンツ丸見えだぞ」 …これまた驚く位、でかい声である。私と同じ目線にしゃがんだ青峰君が、スカートに真っ直ぐ視線を当てている。普段から胸を触る、スカートをめくるなどの暴挙を犯す彼の事だ。この際気になりはしないけど。 「水色か。てかちょっと好みだわ」 「おい青峰口を塞げふしだらなのだよ!!!」 ああああ……!芋づる式! 何に耐えられなくなったのか、真ちゃんが急に立ち上がって青峰君に掴みかかった。おいやめろそれ以上騒ぐな騒いだら来ちゃうだろ!あの人が! 「怒んなって。大体宇佐美じゃまだ胸が不十分だからよ…」 「何の話をしているのだよ…!!!」 「宇佐美っちは今のままでも可愛いっスよ!」 おい黄瀬君何で君まで介入してるんだよ!すごい大騒ぎだよ!185越えに囲まれて注目の的だよ! 「つか緑間。英語の教科書貸してくれ」 「ふん。尽くせる人事は尽くせと普段から言っているだろう」 愚か者、と言いながら教科書、辞書、ノート。一式貸してあげる真ちゃんは本当にツンデレだと思う。可愛いのだよ。 「……ってか英語!私も英語を借りに来たのに!」 「早い者勝ちだろ?じゃあな水色」 「またねーっス!宇佐美っち!」 華やかな隣のクラス組はそう言いながら、早々に退散していった。黄瀬君の投げキッスが眩しい。シャララだった。あと青峰君は後でシメる。 「……もうサボるか」 その時、真ちゃんが聞き捨てならないとばかりに食いつく前に、私の頭の上に英語の教科書が置かれた。 「白、サボったら外周10周行かせるよ?」 「せ、せーくん…!」 教科書を手に取ると、赤司征十郎と淡白な時が裏表紙に書かれている。 「貸してくれるの?」 「貸さなくていいか?」 …全く、ひねくれた人だ!助かったけどさ! 「ありがとう、ございます」 そろそろ立ちなよ、と言われ慌てて立ち上がってスカートの埃を払っていると、真ちゃんと入れ替わるように女子が3人、教室から出てきた。それを横目に、思い出した連絡を伝える。 「そうだ。せーくん、今日私と黒子君、委員会で部活遅れるね」 「ああ、分かった。出来るだけ早く来い」 「はーい」 じゃあ、と清々しい気分でせーくんから離れようとしたが、そうもいかないらしい。 さっきの女子。せーくんを囲んでいた女子が、私達の横に現れて、目をきらきらさせていた。 「宇佐美さんって、赤司君と付き合ってるの!?」 「名前で呼び合ってるよね!?」 ひ、ひええええ……! 噂大好き色恋大好きな女子中学生怖いひええええ! 「あ、いや、そんなことな…」 い、と言い切る前に、私の言葉は遮断された。足が痛い。そうっと目線だけ下にやると、赤司さまの綺麗な上履きに踏み潰されていた。痛いよ! ええ、じゃあ何肯定すればいいの?何を怒ってるんですか赤司さまあああ! 「…………え、と。 ご想像にお任せします」 苦し紛れの言葉を肯定と判断したのか、女子達は黄色い悲鳴をあげて去っていった。 同時に足が解放され、せーくんの手が頭におかれる。 「次の授業、寝るなよ」 そう言い残し、颯爽と教室へ戻っていくせーくんは、すごくご満悦のようだった。私が否定する=敗北とでも思ったのだろうか。 何はともあれ、次の英語の為に私は教室へ走るのであった。 数日後、私とせーくんが付き合っているという噂が流れたのは言うまでもない。 |