― 「だからお前はいつまで経ってもヘタレだと言われるのだよ。いい加減人見知りを直せ」 「し、真ちゃんうるさい!」 只今私、ピンチです。 真ちゃんの背中に隠れて(超落ち着く)、その背中越しに見るのはよく知らない人。 「取って食ったりしないって!出ておいでよー」 「高尾。お前は人事を尽くさないからこうなるのだよ」 「え、これそういう問題?!」 そう、高尾さん。 テスト期間、英語の分からなさに挫折して真ちゃんの家を訪ねた私を迎えたのはまさかの真ちゃん+真ちゃんの友人、高尾さんであった。 「真ちゃん!私行くってちゃんとメールしたよね!」 「ああ。俺と高尾も勉強していたからちょうど良いだろう」 「私が人見知りなの知ってるくせに!」 小声で真ちゃんとそんなやりとりをする。 高尾さんは楽しそうに、テーブルに肘をついて私達を見ていた。 「真ちゃんの幼なじみって言うから、眼鏡かけた真面目ななのだよ少女が来るかと思ったわ」 そ、それは期待に答えられなかったなあ…。すみませんなのだよ、と小さく頭を下げると、高尾さんは何がおかしいのか喉をならしてまた笑った。 「でも可愛いじゃん!真ちゃんに聞いても何も言わないし、どんな感じか気になってたんだよねー! あ、俺の名前は高尾和成ね!真ちゃんの相棒!」 部屋の隅にはSHUTOKU、とローマ字でプリントされたエナメルが2つ並んでいる。 濃いオレンジ色のそれは、確か秀徳バスケ部のものだ。 「高尾さんは、もしかしてバスケ部の方ですか?」 「正解!」 「!本当にバスケ部なんですか!わー…」 真ちゃんの相棒というからには、多分スタメンなんだろう。すごいなー! 「おっ!何か食い付き良いねー」 「こいつは昔からバスケ馬鹿なのだよ。白、いい加減名乗ったらどうだ」 真ちゃんに首根っこを掴まれて、横に座らされる。向かいの高尾さんは、幸い笑顔で待ってくれているようだ。 「…宇佐美白です。私もっ…バスケ好きで、今は誠凛のバスケ部のマネージャーやってます!」 「聞いてる聞いてる!中学の時も真ちゃんのマネージャーやってたんしょ!?」 「語弊があるのだよ」 「真ちゃんのバスケ大好きなので!」 何かごちゃごちゃしちゃったけど、これで挨拶は出来たみたいだ。はあ、緊張した。人見知りって困る。 「にしても誠凛かー。真ちゃんと同中の“影薄い子”がいるとこ?」 「そうなのだよ。 白といい、何故そんな無名の新設校に行った。赤司や黄瀬からしつこく呼ばれていたし、俺も秀徳に来いと言っただろう」 な…何故だろう。いつの間にか私を問い詰める感じになっている。 高尾さんは何の話か分かっているのか否かは、私には分からなかった。でも楽しそう。 「せーくんと黄瀬君は県外だから論外で、あと秀徳と誠凛では……あのね、誠凛ね、めっちゃ綺麗なの」 ……アホみたいだ。恥ずかしいな、これ! 高尾さんはまた笑い、真ちゃんは呆れたようにため息を一つ。 「私は、高校に上がっても絶対真ちゃんのマネージャーがしたいと思ってたよ。でも誠凛が本当に綺麗だったのと、黒子君がキセキを倒すって聞いたから。キセキを倒してヘタレを卒業するよ、私は!」 支離滅裂ですいません!と頭を下げる。(こういうところがヘタレなのか!)真ちゃんが眼鏡をかけなおす仕草をした気配がした。 「直ぐに後悔するのだよ」 「言っとくけど、誠凛は絶対に負けないよ!」 真ちゃんが珍しく、美しいお顔を強くしかめた。うわああ…怒ってるごめんなさい…! 「ま、負けたらせーくんに全裸で告白しないといけないから…」 「どういう事なのだよ!!」 ―好きな人に全裸で告白かあ…。好きな人…真ちゃんに全裸で告白。うーん、やだなあ案外イケそう…。 ―……イケそうなら意味ないですよ。相手は赤司君でどうです? ―絶対日本一になる!! 「あははっ!白ちゃん言うねぇ!ただのヘタレじゃないじゃん!」 すると今まで沈黙していた高尾さんが素早く私の隣に移動してきた。何このサンドイッチ超怖い。相手は敵兵よ、私…! 「うっ!?…た、た、高尾さんにも負けないです」 「そうこなくちゃ。受けて立つのだよ!」 「高尾、真似をするな!」 「ということなのだよ、真ちゃん」 「白!!」 こうして高尾さんと出会い、なんと最後にはアドレス交換までしてしまった。すごく社会的になった気分。ちなみに勉強もよく教えてもらえた。やっぱり真ちゃんは最高! #充実ホリデイなのだよ! |