「も、なにこれ…」

私はぶつくさと文句を言いながら指定された場所に行くために獣道を歩いていた。
なんで私が、とも思ったけど燐と志摩くんが絶対に来い、と言ったから行くしかなくて。
行かなかったらどうなるのか、と考えただけでなんだかため息がでた。
正直、あの二人のことだから次の日起こりながら私に質問攻めをするのだろう、と思った。
それはそれでいいとして、まだつかないのか。と手渡された地図を見ながら更に奥へと足を進める。
たまに水溜りがあったり、ドロドロの場所があるのは昨日雨が降ったからだ。
しかし、やはりそれを差し引いてもこの道はやけに険しい。
女一人でこんなところを歩かせるなんて、と呟きながら足を進めていれば急に視界がクリアになった。
え、と呟いて足元に落としていた視線をあげれば其処にはピンクの頭と黒い頭の彼らの姿が。
私には気付いてないのか、「名前、遅っせぇな」「ホンマやねぇ…なんかあったんかな?」とか何とかのんきに会話する彼ら。
抜き足差し足、と音を立てないように二人に近寄る。
後ろに立てば、やっと気付いたのか勢いよく振り向いて「うわぁあ!」と声を揃えて驚いた二人。
声の大きさに私まで吃驚しちゃった。

「あ、え、名前ちゃんいつから其処おったん!?」
「ついさっき。っていうか女一人で獣道通ってきたんだけど…」
「は?獣道?」
「えぇ?うん…」
「名前ちゃんどこから来たん?」
「あっち」

指差した方は草、草、雑草、草。
私自身どうやってここまでやってきたのか、覚えてない。
えっへん、と胸を張れば志摩くんが名前ちゃんごっつ…とか呟いてたからうるさい!と言えば堪忍え、といってへらりと笑った。
燐に至っては吃驚しすぎて口を開けたまま放心してる。
おーい、と目の前で手を振ればハッとしたような顔をしてすげぇな…と言っていた。

「なんであんな獣道教えたの」
「え、俺らあっちの道教えたぜ?」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「嘘…」
「ほんまですえ。しっかしえらい道通ってきはりましたねー…」
「私凄いね」
「うん、すげぇ」
「で、私をここに呼んだ理由は?」
「あぁ、そうそう。奥村くん」

志摩くんが、燐になにやら耳打ちしてるのを横目に私はもう一度自分の通ってきたところを凝視してみた。
自分があんな所を通ってきたなんて、と思いながらじっと見ていたら燐が私の名前を呼んだ。
何?と答えればちょっと目ぇ瞑ってろ、と言われた。
言われるがままに目を瞑ればほな行くえ、という志摩くんの声が聞こえて。
え、どこに?と問う暇もなく腕をつかまれ無理やり歩かされる。
何、何なの?と思いながらも耳だけを頼りに道を歩く。
この道はさっきの獣道とは打って変わって、大きな石も無ければ小枝も落ちていない。
それどころかキチンと整備されているのか、躓くことはなかった。

「お、着いた着いた」
「ほんまやね」
「もう目、開けてもいい?」
「まだあかん。もうちょっと待ってな」
「いーもん見せてやるからな!」

志摩くんの優しい声と、燐の力強い声が聞こえて幾分か安心した。
視界が遮られているせいだろう、私の体は知らない間に強張っていた。
まだ?と遠慮がちに聞けばもうちょいやで、と志摩くんが言った。
それと同時にぎゅ、と腕に力を込められて。
なんだか安心してふぅ、と一息つけば燐がもういいぜ!と元気よく言った。
す、と目を開けば其処には一面の花畑。
あまりの美しさに、唖然としていれば燐が照れくさそうに笑いながらすげぇだろ、俺が見つけたんだぜ。と自慢げに言った。
それに付け加えるように志摩くんが、僕が提案したんやけどね、とこれまた照れくさそうに言った。
嬉しくて溢れてきた涙をそのままに、ありがとうと呟けば二人は笑ってどういたしまして、といった。

「っ、…」
「な、なんで泣くんだよ!」
「ちょ、泣かんといてや名前ちゃん!」
「ごめ、嬉しくて…、」
「…へへ、連れてきてよかったな!なぁ、志摩!」
「そうやね、泣くほど喜んでもらえるとは思ってなかったさかい、よかった。」

くるり、と二人のほうを向いて、笑ってもう一度ありがとう、と伝えれば二人は笑うだけだった。
だけど、その笑みが優しげで。
私のためにここまでしてくれたのか、と思うとまた涙が溢れてきた。
零れ落ちる涙を隠すように二人に抱きつけば優しく抱きしめ返してくれた。
私は、本当に幸せ者だと思った。

彼らに愛されるたび、この世に生まれた意味を知る

(生きる意味を知りました。)
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どうも、志隈です!
リクエストが志摩か燐だったので、どうせなら二人でいいじゃないか!と思って両方登場させました…!
気に入っていただけたでしょうか?
長々とお待たせしてしまい、すみませんでした!
沙遊様のみ、お持ち帰り可、です。
タイトルはレイラの初恋様よりお借りしました。




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