- 「やっぱり、アレや」 「何や」 「花ちゃんは、可愛ええなあ」 ぶっ、と私は飲んでいたお茶を吹き出した。 昼休み、中庭での昼食中のことだ。 重力に従って口から滴る緑色の液体を拭いながら、私は目の前の志摩をぎろりと睨む。 「このエロ魔神」 「事実を言ったまでやで?」 さすがは、エロ魔神。 こいつの“可愛い”には慣れてきたが、改めて不意打ちで言われると何とも恥ずかしい。 志摩は女の子なら(多分)誰でも口説きまくる奴だ。 出雲ちゃんにアドレスを聞いて拒否されるのを何回見たことか…。 「志摩はね、誰にでもすぐ可愛いっていうの止めた方がいいよ」 「せやかて、女の子は皆可愛ええしなあ」 「もう根っから頭がダメなんだね…。 あ、あとすぐ抱き着くのも止めなさい」 最近の志摩のスキンシップは過剰だ。挨拶がハグ。由々しき事態といえる。 「それは花ちゃんにしかやってへんよ」 「出雲ちゃんにやったら殺されるよ。しえみちゃんにやっても…うーん、奥村ツインズがうるさそう…」 つまりは消去法で、抱き着けるのは私しかいない! 人差し指を志摩にむけて突き出し、某名探偵みたいなポーズ。 志摩は垂れ気味の瞳を数回瞬かせて、へにゃっと笑った。 「違うて。 好きな子には触れていたいものやろ?」 まるで、カレーには醤油やろ?みたいなノリだった。ちなみに私はカレーには何もかけない。 私はクリームパンを貪りながら笑みを取り繕う。 「…ん?うん、ああ、志摩は女の子好きだよね」 「そうやないって」 クリームついてる、と志摩は私の口端に手を伸ばし、拭った。 いまさら恥も何もなくて、ありがとうと返す。が。 「…志摩、お前今何した」 「舐めたんや」 恥 ず か し い 奴 ! 恥も何もない訳はなかった。何だよ舐めたって。エロ魔神め。 「つかこれ何て乙ゲー…?いや、でも相手は志摩だし…」 「なあ花ちゃん」 「な、何」 「こういうことも、花ちゃんにしかせえへんよ?」 クリームを綺麗に舐めた志摩が笑う。 こういう事、というのはさっきのクリーム事件(仮)だろう。 「花ちゃん、顔赤いで」 「うるさい馬鹿!」 #バターピンクみたいなベタな恋 Thank you for 知香 sama ! リクエストありがとうございました! title by みみ様 |