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「あー、お腹空いた。もう死んじゃう。りんりんが私のこと好きって言ってくれないと死ぬ!」
「弁当半分食うか?」
「いや、雪から掻っ攫うからりんりんは気にしないで!好きって言って!」
「俺は菜子のことは雪男と同じ位好きだ」
「りんりんの鬼畜!!」

4限目終了直後の教室にて、隣同士ぐだぐだと会話している2人組。
昼休みということで生徒はほぼ全員が昼食を取るこの時間。

菜子の食事は普段購買のパンなのだが、4限目が長引いたせいで完全に出遅れた。つまり、昼抜きだ。

「とりあえずいつもんとこ行こーぜ。雪男もいるかもしんねぇだろ?」
「うん…」


*
星海菜子は大食い魔だ。
その胃はブラックホールと呼ばれ、一般男子高校生の燐以上にご飯を食べる。
そんな彼女が昼ご飯無しかもしれないという危機に至ったらどうなるか?

「雪ィィイイイ!ご飯を寄越しなさい!寄越さなきゃ撃つ!」
「…菜子、こんな人前で散弾銃なんて出さないでくれる?ここは塾じゃないんだから」
「うっさい!お腹減ったの!」

結果、暴走する。
庭に移動した燐は、保険として半分弁当を残しながらも、もう半分を1人でガツガツと食べていた。

購買の近くでは不運にも通り掛かった雪男が、菜子に散弾銃を向けられている。(一般生徒は一気に距離を置いていた)


「あれ、菜子ちゃんとちゃいます?銃出してはりますわ」
「…何しとんねん、あいつ」

そしてこちらも偶然通り掛かった京都3人組。
興味津々の志摩、呆れ顔の勝呂、心配そうな子猫丸。
三人それぞれ様々な表情で暴れる菜子の様子を眺めていた。

「だからこれは僕の。残念ながら菜子にはあげられないよ」
「このケチメガネ!あんたなら女子からいくらでも貰えるでしょ!」
「もしお昼を忘れたのがしえみさんだったら、僕はお弁当を譲ったよ」
「喧嘩売ってんのか!」

菜子は絶対にくれないだろうと分かり、散弾銃をしまいながら雪男に唸ってから辺りを見回し始める。
次のターゲットになったのは。

「廉造…良いところに」

*

「廉造くーん」
「お、菜子ちゃん。何や、君付けなんて珍しいやないですか」
「あのね、私…今度廉造くんと一緒にお風呂入りたいな…」
「風呂?」
「うん!」

菜子が抱き着いて擦り寄ったのは、遠くで見ていた志摩だった。

体を密着させて、どこぞで夜の仕事をしていそうな雰囲気を滲ませながら。菜子はそう言って上目遣いに志摩を見る。

「私、廉造くんの背中流したいな」
「ほ、ほんまに?」
「うん、だから」

パンちょうだい?


こうして菜子は無事にパンを3つ手に入れた。
大してその日の志摩の昼は焼きそばパンのパンの部分だけだったと言う。

2011/6/1



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