- 私とりんりんの出会いは、正十字学園の馬鹿でかい大講堂の入学式だ。 「ええー…入学式出るの…?高校行きたくないよー」 「まあそう言わずに! ついでに悪魔の彼とも挨拶してきなさい」 「ああ…刀しょってるんだよね? 了解…」 メッフィー理事長に高校入学を奨められ(というか強制され)、私は悲しいことに入学式にも参加することになった。 生まれてこの方、学校になんて行ったことがない。 メッフィーに引き取ってもらってから祓魔塾にしか行っておらず、毎日銃と戯れていたのだ。 「お」 メッフィー曰く、悪魔の彼と私は同じクラスに同じ寮らしい。つまり、監視役だ。 「隣、いいですか?」 講堂に入るなり早速“おくむらりん”君らしき後ろ姿を発見。先行き良い感じだ。 「あ、おう」 振り返る彼。 長い前髪と、青っぽい黒い瞳。メッフィーのように若干尖った歯に耳。 (かわいい…) 「じゃ、失礼します。 早速だけど、おくむらりんってどう書くの?」 すとん、と隣に腰を落とす。 「奥の村に、燐はこう… って何で俺の名前?!」 「メッフィー理事長に何も聞いてない?私、あなたの監視役」 素直に自分の手の平に“燐”の字を書いていた奥村君は、ようやく不思議に思ったらしく大きな目をぱちくりさせていた。 「監視役…?メフィスト…? 聞いてねえぞ」 「ありゃ。まあ、とにかく監視役兼護衛役なの。星海菜子。今日からよろしくね」 奥村君は戸惑いつつも差し出した私の手をしっかり握り返してくれた。…照れてる…。 「奥村君かわいい!!」 「うおっ?!おまっ、やめ…!」 「燐…っていうんだよね?燐!燐!りんりん!」 「お、落ち着け!離れろ!」 今思えば静粛なる式の直前で、りんりん叫びながら彼に抱き着く私はさぞかし浮いていただろう。 * 「最初に新入生代表の言葉を奥村雪男君に…」 「雪お…っもがっ! 何すんのさ!りんりん!」 「おま、あれ、雪男…!」 「あれ、りんりんも知り合い?」 「新入生代表って入試1位の人だよねー」 「しかもかっこよくない?あの人!」 新入生代表の挨拶をするために壇上にあがったのは―奥村雪男。 雪とは、祓魔塾時代からの長い付き合いだ。 そして嫌いだ。気に食わない。 「知り合いも何も、あれ俺の弟だ。…すげえな、雪男」 「あいつがりんりんの弟!?…もごっ」 「声がでけえよ!」 そうか、そういやあいつの名字も奥村だ。 こんなにかわいい燐君と、あいつが兄弟…?しかも同い年ってことは、双子…。 「菜子、入学式終わったぞ。見学行こうぜ」 「…りんりん。あなたは弟みたいになっちゃだめだよ」 「?頑張ってもあんな頭良くなれねーから!」 にこにこ笑いながら私の前を歩くりんりんを見ながら、私はこれからの生活に大きな期待を抱いた。 * 「それが何…今や大嫌いな雪と同じ寮に隣室…有り得ないよね、りんりん」 「お前初対面から抱き着いてきたよな」 「ステージの裏から撃ち抜いてやろうと思ってたよ」 「なんだこのブラコンメガネ!やるかあ!!」 2011/5/23 |