- !もしもヒロインと金造が祓魔塾時代同級生だったら、のifストーリー !京都編辺り 16歳、夏。 京都での任務は、私の中ではりんりんと行く京都ラブラブ旅行(仮)のはずであった。のに。 「廉造ー、お兄ちゃんに脳天一発入りまーす!」 「アカンアカン菜子ちゃん前科一犯や!!」 目の前でふてぶてしい態度を貫いて私を見下しているのは、志摩金造。廉造のお兄ちゃんであり、元祓魔塾同級生。 「菜子」 「何!」 「昔やってたアレやってみい。背伸びた言うてたやろ」 金造は嫌ーな憎たらしいな笑顔を浮かべてアレ、と言う。横で廉造が首を傾げた。 アレとは、昔よく金造とやっていたもの。金造の手に背伸びせずにタッチする、ただそれだけ。 「の、望むところ…」 ただ、それだけ、なんだけど! 金造と私の身長差は4年前28cmくらい、今はさらに広がっている。ちなみに身長は、あれから1ミリも伸びていない。 どや顔の金造は、高く高く、ただでさえでかいのに手を上に掲げた。 「身長の伸びた菜子ならこれくらい余裕やろ」 もちろん届かない。 届くか。 届かないに決まってるでしょう!! 「金造の…」 「あ?」 「ドアホォォォオオ!!!!」 一応悪魔とのハーフ。跳躍力は人間よりはある。硬い床を蹴って、飛んで、思い切り振りかぶった平手を金造のアホ面にぶつけた。 「き、金兄ぃいいいいい!」 ズザーッと庭の砂の上を、金造の身体が滑る。廉造は慌てて駆け寄り、私は悔し涙を拭いながら負け犬の遠吠えを開始した。 「金造のドアホ!巨人!馬鹿!アホ!」 「こんの…」 血混じりの唾を吐きだし、赤く腫れた頬を押さえた金造はふらふら起き上がり、私の襟首を掴む。やばい、と思ったらもう遅い。 襟首を掴まれたまま私の身体はブンブン振り回されて、ビュンビュン風を切る。 「どぅあほぉぉお」 「ドチビいいいい」 「アカンって金兄!菜子ちゃんは女の子!女の子や!あとパンツ見えてはる!」 ぐるぐる回っていた身体がふっと解放され、反動で飛ばされた身体は廉造にぶつかった。い、意図的じゃないんだからね! 「いっ…菜子ちゃん、怪我は?」 「悪魔とのハーフがそんなやわな訳無いやろ」 「ハーフ…?」 庭に座り込んだせいで、最近新調した可愛いデザインのショート丈のコートも砂だらけ、最悪だ。 そんなことを考えていると、不機嫌そうな金造に対し、廉造が目を輝かせながら私に手を伸ばしている。 「っちゅうことは、菜子ちゃんも尻尾…あるんか?」 「へ?」 「菜子、お前あれやろ。 この貧相な身体に隠して…」 思わず身体が固まる。 スカート。背後の金造の、ドアホな手が私のスカートをめくっているのだ。 「金造の…」 「あ?」 「ドアホ金髪野郎!」 前を向いたまま、ストレートに力を込めて放った肘鉄は、見事に金造に命中した。 「覚えてろぉおぉお!」 久しぶりの喧嘩は、惨敗だった。 2012/2/20 |