- 高校生といえば青春だ。 青春といったら友情に恋! なるべくして高校生になったんだから! 私にとって、目眩く青春は楽しみの対象だった。 学校に加え祓魔塾にも通い、仲の良い友達もできた矢先。 「そろそろ恋人が欲しいですなー…」 「恋人?」 前の席の燐としえみちゃんが不思議そうに首を傾ける。(かわいい) 肯定しつつ突っ伏してうだる私に、しえみちゃんや燐は何とも気になる発言を投下してくれた。 「お前、雪男と付き合ってんじゃねえの?」 「……………は」 「先生ってプライベートではどうなん?」 何を嗅ぎ付けたのか、ひらりと志摩までこちらに飛んでくる。固まる私の肩に腕を回して楽しそうに身体を近づけた。香水っぽい匂いがする。 「わ、私は雪男とは…。 どっちかというと志摩みたいな人がタイプだよ!」 「ほんまに?嬉しいわあ」 「志摩くん。席に着いてください」 にっこり。 突然盤石のような笑顔で現れた雪男は志摩を睨みつけて(笑顔で)、教材を教卓にたたき付けた。 ああ、これは怒らせてしまったな。わ、私が悪いのかな! 「せ、先生…。来てはったんですか」 雪男の名前の通り雪ような冷たい威圧感に苦笑を漏らしながら、志摩はパッとその場から後ずさる。雪男の権力半端じゃないなあ、とぼんやり思った。 「やっぱ先生嫉妬してるやないか」 「雪男!雪男は私に過保護すぎなんだよ!!」 びくびくと肩を震わせて私の背中に隠れる志摩が何とも情けないという事実はまあ置いといて。 雪男は、過保護なのだ。 私が男の子と喋る度に目を光らせ、邪魔して、おかげで私の青春どこへやら。 「当たり前です。僕は神父さんから、貴女を守るように言われていますから」 その昔、私が悪魔に襲われたのを助けてくれたのが藤本神父。それ以来よく修道院に遊びに行っていたし、神父さんが私を可愛がってくださったのも覚えている。 「それにしても過保護すぎるって!私の青春どうしてくれんのさ」 雪男が私の周囲の守りを固めるせいで(それだけじゃないけど!)、クラスの隣の席の男の子にさえ距離を置かれる始末だ。 「心配しすぎです」 授業開始までまだ時間はある。 燐はしえみちゃんと談笑しているし、志摩は勝呂達のところへ戻っていた。出雲ちゃんは予習中、宝は相変わらず。 そんななか笑顔を柔らかくした雪男は私の頬に手を添えた。詰められた距離に少しだけどきどきするのは仕方ない。 「駄目。女子高生としてはやっぱり、彼氏欲しいもん」 雪男は銃を扱うから 、手がごつごつしている。 女子なら叫びだしそうな整った笑顔といい、近い距離といい。…あれ、私今青春してる? 「僕が責任をとってあげますよ」 …こんな状況で赤くならない方がおかしい。 目の前の雪男がフニャフニャするみたいに、視界がぼやけて私は俯いた。 「…ばかたれ」 まあ、こんな青春とやらも良いかもしれない。 授業開始のチャイムが響いた後も、私の身体の熱は抜けなかった。 #わたしの青春が迷子です 11/8/23 主催企画に提出 |