- !not連載ヒロイン 可愛らしい、美少女。 ぴったりとその言葉があてはまるような存在。 可憐且つ、大人しそうで日本女子らしいその少女は、いつも1人で静かに佇んでいた。 「お、また明日な」 「うん、ばいばい」 祓魔塾に、出雲と朴以外の女子が居ないせいもあったかもしれないが、彼女は独特の雰囲気を持ち、いつも1人。口を聞くのは、奥村燐と挨拶を交わす程度であった。 「何か…見覚えあるんやけどなあ…。こう、前から探してた、欲しかった物みたいなんや」 スカートからすらりと伸びた、白いニーソックスに包まれた脚を見ながら、志摩は首を傾げる。 サラサラと長い髪を靡かせ、少女は教室を後にしていた。 「何や志摩。新しいナンパか」 「坊、違くて。本当に…」 勝呂は志摩の視線を追いながら、呆れたようにため息を吐く。 彼女の容姿が整っているから、目を、心を惹かれるのか?否、違うのだ。 志摩の心情は何か渦巻いているような、不快な感覚を及ぼしていた。 * 「あ……、偶然やなあ」 噂をすれば何とやら。 翌日、馬鹿でかい校舎のなか物凄い確率で志摩は少女と出会った。 「偶然」 少女は表情を1ミリも動かさず、ただ透き通った瞳で志摩を見据える。容姿から想像できる、透明みたいな声だ。 「何してはったんですか?」 今は2限目と3限目の間の休み時間だ。 ちょっと気晴らしに、と出た中庭にまさかこんな人物がいるなんて。志摩にとっては幸か不幸か。 「疲れたから、外の空気吸いに来たんですわ。志摩君こそ、何してはったん?」 「俺は気晴らしに………あれ?」 あははと渇いた緊張の笑みを浮かべるが、少女から自分にとっては聞き慣れた独特なイントネーションが聞こえて疑問に思う。 いきなり言葉を中断した志摩に、少女はどうしたん?と不思議そうに首を傾げてみせた。 「いや、今の京都弁ですよね?」 「私、中学あがる前までは京都におったから。普段あんまり喋らんけど、志摩君が京都弁だから釣られてもうた」 ふわりと上げられた口角。 初めて見るはずの笑顔はとても可愛らしく、何故か懐かしく。 「…俺、やっぱ君に会ったことありますわ」 「なら、名前は?」 少女の挑戦的な切り替えしに、志摩はあー、と困ったように言葉をつまらせた。そんな彼をやはり可愛らしい笑みで見つめた少女は、耳元に口を近づける。 「私の名前な、――」 #あ、すき、かも title by ashelly様 |