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!修道院時代(中学)
!not連載ヒロイン


「ねえ燐くん」
「何だよ」
「それ、楽しくないでしょ」
「あ゙ー……おう」

目の前には、からからに晴れた真っ青な空。
背中には硬いコンクリート。
隣には幼なじみ兼友人。
彼の手には、落ちていたエロ本。

「だって燐くんの好みは可愛いよりセクシーだからね。うわ、胸でかい」
「お前とは上と下の差だ」
「天と地じゃなくて?あと余計なお世話だよ!」

飽きたのか、そのエロ本を近くに放り投げた燐くんは自分の腕を枕にして寝転んだ。
もともと寝転んでいた私はごろごろと、制服が汚れるのを気にせず横に並んでくっつく。

「奥村兄弟の匂いは落ち着くね」
「じゃあ、菜子の匂いは落ち着くな」

うとうと。睡魔はゆっくり、確実に私達の意識を奪っていった。

「何で空は青いんだろうね」
「分かんねーよ」
「私も。不思議だなあ」
「雪男なら知ってるんじゃねえの」

「太陽からの光が大気中の微粒子にぶつかって散乱するとき、青のような波長の短い光が散乱されるんだ」

頭のいい言葉。
睡魔を悪化させるような難しい言語の塊を投下したのは、もうひとりの幼なじみ兼友人だった。

「雪くん。授業は?」
「もう昼休みだよ」

雪くんは私の隣に腰を降ろして、燐と私、2人のお腹にそれぞれパンを乗せる。恐らく、朝からサボりっぱなしの私達に昼食を持ってきてくれたのだろう。
それから自分もべりべりとパンの袋を開けて貪り始めた。反対の隣では燐も既にもふもふとパンを胃に収めていた。

「…燐くん、雪くん。お願い、起こして」

怠い体はいうことを聞かない。
だから2人に腕を引っ張ってもらって起きた。駄目だ、老化だ。

「そうだ、菜子。クラスの村上が携帯のアドレス教えて欲しいって言ってたんだけど、どう?」
「何それ。何で?」

対して思い出せないクラスメートの顔を浮かべながら、私もパンを貪った。

「…お前に気があるんだろ。いつもやたら見てたし」
「じゃあ、やだ」
「何で?」
「自分でアドレスも聞きにこれない甲斐性無しの男は嫌い。
それに中学で授業サボる子なんか珍しいから、それで私を気にしただけだろうし」

中身がぎっしり詰まったお気に入りのクリームパンを見つめる。おいしい。さすが雪くん、私の趣味分かってる。

「ってことで教えたら超怒るから。雪くんが私の下着盗んだって言い触らす」
「はいはい。…兄さん、今の嘘だからそんな引いたみたいな顔止めて」

これで村上くん、すごいいい人だったらどうしよう。
いまさらどうでもいいことを考えつつ、パンを食べ進めた。
ごろんと正座をした私の膝に寝転んだ燐に、食べた後すぐ寝ると豚になると忠告するのも忘れずに。(豚じゃなくて牛だと、雪くんが訂正してくれた)

「あと、私の恋人は燐くんだから」
「ブッ!」
「なんちゃって」
「兄さん、落ち着いて」

むせる燐くんを落ち着かせるように、私は膝の上で踊る黒い髪をわさわさ撫でた。
さらに彼の動揺っぷりが面白かったのか、笑いを堪える雪くん。

燐くんは少しだけ照れたように鼻を鳴らして、ゆっくり瞼を下ろした。


#或いは只の空想夢

title by みみ様



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