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*捏造



バタバタと、軽く地面を蹴る音が塾の廊下に散らばる。

「ネイー!お久しぶりー」
「…菜子か。先生をつけろ」

音の元である小柄な少女、菜子は前方にいた教師であるネイガウスにきゅっと抱き着いた。

「いいじゃーん!ネイと私の仲でしょう!」

菜子とネイガウスの仲は何気なく、長い付き合いとなっている。
メフィストが幼い彼女を拾った時に知り合い、祓魔塾に通う間も定期的に顔を合わせていたためだ。

「…それで、何の用だ」
「悪魔を召喚する紙ちょうだい!で、私と個人授業!!」

菜子は抱き着いた腕を解いて、何故か自慢げに胸を張った。ネイガウスは訳が分からないとばかりに怪訝な表情である。

「お前に手騎士の才能がないのは自分でも分かっているだろう」
「でもやりたいの!出雲としえみ見てたらやりたくなったの。女で出来ないの私だけじゃない」
「…」

お願い、と頭いくつぶんも高いネイガウスの顔を見上げて必死に言う菜子に根負けしたのか、彼はため息を一つ付きながらついて来いと小さく呟いた。


*

2人以外いない為にガラリとした教室で、ネイガウスは菜子に魔法円のかかれた紙を渡した。

「よいせ」

携帯している小刀で躊躇なく自分の指を切った菜子。指からは数適の赤黒い鮮血が滴り、紙に落ちる。

「何でも良いから考えろ」
「しえみみたいに、おいでーって言えばいいの?」
「イメージはそれでいけ」

菜子は赤く染まった紙をひたすら睨みつけるが、心は全く集中しない。脳内は今日の夕食と、想い人の事でいっぱいだ。

「むー」

その時だった。

「おわあ?!」

むわりと仄かに灰色の煙と共に、少年の焦ったような声。
小さな紙から飛び出してきたのは、正真正銘サタンの末裔。

「菜子…?」

奥村燐であった。


「りんりん逃げて!!」
「は?!」

慌てて引き破られた紙。破片が不規則に空を舞うのと同時に燐の姿が消えていった。

「…菜子」
「イ、イゴール、ネイガウス君よ!あい、りすぺくと、ゆー!あいらぶゆー!」

チュッ!と投げキスを飛ばして、ウインクをして、菜子は満面の笑みを浮かべる。
一般的に見たら可愛らしいが、それが通用する相手では…少なくとも今はない。

「バイバイ!またね!」

明らかに顔をしかめているネイガウスに手を振りながら、菜子は慌てて教室を飛び出したのであった。

(イラつくネイガウスさんマジ怖い)



「兄さん!寝ぼけて剣抜いていきなり消えるなんて…一体どうしたの!?」
「……菜子に召喚された」
「…?!」

*



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