- 「えぇー、じゃあ高瀬は平和島…一番後ろの窓際の隣だ」 「はい」 教室内は好奇心に満ちた声でざわめいていた。 5月、中途半端なこの月にやってきた転校生がそんなに珍しいのか、私は何だか疑問に思う。 突き刺さる視線を浴びながら、私は指定された席に座った。 隣の印象的な名字の人、平和島さん、を覗き見る。きらきらした金髪と、整った顔立ちの男の子だ。 「高瀬は教科書が届くまで平和島に見せてもらってくれ」 「はい」 そこでホームルームが終了し、私はペンケースとルーズリーフを鞄から取り出し、話す人もいないので静かに待っていた。 「おい」 「…はい?」 クラスの子達は私を見ているだけで、話し掛けてはくれない。悲しく思っていると…平和島、君が私のほうを見ていた。 「教科書、見せるから机くっつけんぞ。嫌だったら言え」 「いえ!嫌なんてそんな。 むしろありがとうございます」 がたん、と離れていた机がくっつく。何故かざわめいた教室に、平和島君の舌打ちが一つ。 するとクラスの人達は一斉に視線をそらし、談笑を再開した。 「…平和島君は、一匹狼スタイルですか?」 「あぁ?何だそれ。つか敬語使わなくてもいい。同い年だろ」 「あ、はい。いや、うん」 最初は不良かなあと思ったけれど、私はあいにくこんな優しい不良は見たことがない。 「お前、名前は?」 「高瀬菜友。よろしくね」 「高瀬か。俺は平和島静雄だ」 「和風だね。犬みたい」 「うっせえ」 わしゃわしゃ。 一瞬何をされたか分からなくて固まる。 (頭、撫でられたんだ) 「……悪い」 無意識だったのか、平和島君も驚いていた。それにしても妙にやってしまった、みたいな表情とクラスのざわめきが気になる。 (……何なんだろう?) 「…平和島君、私は今何故か恥ずかしいです」 「…う、あ、悪い…」 私の言葉に何故か平和島君も恥ずかしがる。 …不思議な人、だなあ。 静雄ルートは無意識にイチャイチャ。 |