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「…」
「…」
「さっちゃんこわーい」
「…」
「私泣いちゃう」
「海…貴様」
「あれ…キュートよりセクシー派だったか」
「何故シャツのボタンを開ける!!」

ごん。
私の硬い頭に、硬い拳。
手加減を知らないそのげんこつで、ひどい鈍痛が響いた。

「痛いよさっちゃん!!」
「だからその呼び方はやめろ!!」

生徒会副会長、下まつげが素敵な椿佐介。通称さっちゃん。(と私は呼んでいる)

とある放課後、ちょっくら部室でヒメコちゃんに会って癒されてこようと生徒会室を脱出した私。
が!案の定すぐにさっちゃんにバレて、逃走も虚しく廊下にて壁際に追い詰められてしまった。

「なあにさっちゃん、せくはら?」
「そんなに僕を怒らせたいか」
「ぬー…!ほっぺら、いひゃいいひゃい」

私がセクシーを目指して開けたシャツのボタンを閉めるさっちゃんにそんなことを言ったら怒られた。頬を尋常じゃない力で引っ張りながら、さっちゃんははあ…と大量の二酸化炭素を吐き、ため息をつく。

「堅いよ、さっちゃん」
「海、お前は生徒会の一員としての自覚が…」
「あー、あー!」
「…っ!」

長いお説教に備えて私は耳を塞いで雑音準備。うわ、さっちゃんすごい怒ってる。
バンッと私の顔の横の壁にたたき付けられた手には、さすがに冷や汗が出た。壁を伝わって背中に振動を感じる。

「さーすけ、ごめんね?怒っちゃやだよ」
「…なら言動に注意しろ」

顔の横からさっちゃんの手が退かされ、私の壁となっていた体も横にどいた。
(チャンス!)
懲りない、とまあ自分でも分かってるけど。その隙に私は再び廊下を駆け出した。つもりだったのに。

「同じ過ちを自ら進んで犯すとは…愚か者の証拠だ」

キラッとさっちゃんの瞳の眼光が鋭くなったは多分私の見間違えではない。
さっちゃんに左手首を掴まれた私はそれを振りほどきながら走ろうとして、間抜けに転んだ。

「いたい…」
「生徒会室に戻るぞ」
「さっちゃんが私にえっちなことしたから腰が痛い!動けないよーっ!!」
「なっ…!?」

慌てて、叫びまくる私を立たせて口を塞ぐさっちゃんには少し笑ってしまった。放課後とはいえ生徒達は居る。聞かれたら誤解を招きそうだもんね、うん。

「普通そこはお姫様抱っこだよね。おんぶすらしてくれないなんて、紳士失格だよ」
「もう黙れ喋るな」

私の手首(手じゃないのも紳士失格)を引っつかんで大股で歩くさっちゃんの背中を見ながら、私はさっちゃんらしいなあと少し笑ってしまうのだった。


#宇宙に迷いたいお年頃
title byashelly


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椿くんわかんない




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