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「てゆうことで、ミサカは海に会ってきたんだけど、なんと!今海は高熱で苦しんでるんだよ、ってミサカはミサカはあなたの杖を持ちながら海の危機的状況を伝えてみる!」

家に帰ってくるなり、息を切らした打ち止めは一方通行の杖を引っ張りながら彼にまくし立てた。
きっ、と普段より眼力を強める打ち止めに一方通行は動じることはない。

「で、お前はその高熱のアイツを一人孤独にそのまま置いてきたわけだなァ?」
「み、ミサカはミサカはあなたを睨みながら違うよって大否定!断じて海を見捨てるなんて非情なことは…!」

打ち止めはブンブンと首を振りながら、再び杖を握りしめて一方通行に差し出す。

「…ンだよ、その杖は」
「海はあなたを待ってるってミサカはミサカは乙女心を読んで手助けをしてみる」

自慢げに杖を差し出す打ち止めと、面倒臭いとばかりにソファーに体を預ける一方通行。
2人はしばらく無言で見つめ合い―


*
「チッ…。面倒臭ェな」
「それは彼女である海に向けての言葉としては不適切かなってミサカはミサカは注意してみたり!」
「いいンだよ、アイツにはそのくれェの扱いが合う」

ガチャリ。錆びた金属が擦れ合う。一方通行はポケットから鍵を取り出し、古びたアパートの扉を開けた。
ここは海の部屋であり、鍵も海が渡したものだ。

「海、大丈夫?」

扉が開くのが待ちきれないとばかりにうずうずと体を震わせていた打ち止めは、案の定扉が開いた瞬間に駆け出した。

「う、ち…どめちゃん」
「ミサカは打ち止めじゃなくてラストオーダーなんだよってミサカはミサカは細かい修正をしながら、海を心配してみる」

小さなベッドの上で、小さな体を丸める少女。
一方通行はベッドの側に寄って打ち止めと並んだ。

「馬鹿は風邪引かないって言うのになァ」
「…その声、アクセ…ラ…何で」
「馬鹿のくせに風邪引いたどっかの誰かのために来てやったんだよ」
「ふ…」

ぼすんと小さなベッドの上に打ち止めが乗り、一方通行も腰をかける。
照れ隠しか、舌打ちをする一方通行を見ながら海は…涙を流していた。

「…何泣いてンだよ」
「うっ…嬉しくて、ずびっ…」

海は仰向けのまま滝のように涙を流し、目を自分の手で覆い始めた。

「わ、わたし、いつも何か扱いひどいけど…風邪ひいたってメールしたら土御門と、あわ…きちゃん…ずびっ、海原、当麻も、青ピも案外返事くれて…っ。一方通行と打ち止めちゃんはお見舞い来てくれた…げほっ」

うえーっげほっ、と泣きながらむせる海の横で“もしかしていい雰囲気かも!”と打ち止めがこっそり部屋を出るが、2人は気づいていない。

「お前、そいつらにメールしたんだな…?」
「そうだよ…すごい体怠くて、助けて欲しいことを数少ない知り合いみんなに送って…あ、垣根さん以外だけど」

枕元のティッシュで涙鼻水を拭いながら笑う海。一方通行は自分の携帯を確認する。最近のメールを重点的に。

「…オイ」
「なあに、一方通行」
「メール来てねェぞ」
「…」

2人の間に生じる数秒の沈黙。
海はゆっくりと携帯を操作して送信履歴を確認してけろりとした表情であることに気づく。

「あれ、一方通行にだけ送ってないや」

うっ、うっかりだなあ!と笑う海。眉間にシワを寄せる一方通行。

「や、やだなあ一方通行さん!なにチョーカーに手かけてるのさ!」
「俺だけに連絡忘れてお前は他のやつからのメールにヘラヘラしてたっつゥのか海さんよォ…」
「うん、そこは、あの。
…てゆうか怒られると思わなかった」

本日3回目となる盛大な舌打ちを披露した一方通行はくるりと玄関にむけて方向転換をする。
そのまま早々に立ち去ろうとした一方通行のシャツを、海は重い身体を動かして掴んだ。
小さな衝撃と、微かに部屋に溶け込む海の息切れに一方通行は足をとめ、振り返る。

「ごめんね…。来てくれて、すごい嬉しい」

赤くなった顔に柔らかい笑みを浮かべて、四つん這いのまま海は言う。

「…」

四つん這いになったことで、海のボタンの開いたパジャマから中が覗く。

「オイ」
「はい、なんでしょう!」
「…………寝ろ」
「うん…ってわああ!」

首を傾げる無防備な少女を、一方通行は乱暴に、勢いよくベッドに押し込んだ。

#ちゅちゅちゅ
(いい雰囲気ってミサカはミサカはガッツポーズ!)

title by みみ様




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