-

「とーうーまくん!当麻くんっ!」
「うおっ」

がばっと床から軽く跳躍したその影は、街を歩いていた少年の首に絡み付くようにくっついた。

「海か…」
「私じゃご不満?」
「いんや。また不幸事じゃなくてよかったって、むしろ上条さんは安心ですよ」
「そーう?」

背中に抱き着いていた海はしゅるりと腕をほどいて上条の隣に並んだ。
自然な流れで2人は同時に足を進める。その足取りはのんびりと、穏やかな一時を感じさせた。

「うーん、あったかいね今日は!春だね!こりゃ当麻くんの頭に春がきちゃうの納得だね!」
「どういう意味だ、それ?」

風はふわりふわりとゆるやかに吹いている。
上条の視線は包むように吹くそれに靡かれる海の髪についそそがれる。
その長い髪を押さえ付けながら、海は悪戯っ子のように笑った。

「見たんだよ、私!
昨日当麻くんと可愛い中学生が楽しそうに写メ撮ってるの。あれは彼女!?あの子って常盤台の御坂美琴ちゃんだよね!」
「あー…」

機械のように勢いよく、まくし立てるように話した海の頭に置かれた上条の手。

「何で泣きそうなんだ?」
「へっ…?」

手が置かれた自分の頭をしきりに見ながら、海は戸惑う。上条が本当に不思議そうに問うものだから、タチがわるい、と海は思った。

(…てかタチがわるいってなに?別に当麻くんのこと意識してた訳じゃなく、えと、何だろ)
「御坂とはそういう仲じゃないっていうか…何だろうな。あ、あれは罰ゲーム!
…って海さーん?聞いてますー?」

上条に顔を覗き込まれそうになった海は、慌てて近くの清掃ロボを引き寄せて投げつけた。ちなみに彼女の能力によって為せる技だ。
間一髪でそれを避けた上条は、さらに何かを投げられる前に海の手を自身の右手でにぎりこむ。一回り小さな柔らかい手に、少しだけ胸が高鳴った気がした。

「わ、わたしは当麻くんが、か、カミジョー属性なんて無いんだから!この!手ぇ離して!」
「だって離したら海さん!能力使うでしょーが!上条さん分かってますからね!」
「う、うぅ!」

力強く握られた双方の手。
真っ赤な顔の海は、不幸だ…と呟く上条の頬も染まっていたことを知らないまま。
2人はぎくしゃくと歩を進めた。


#迷子のもふもふ




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -