- 何の変哲もない、放課後だった。 生徒会の仕事で必要になった大量の資料を取りに行く為に、4階端という資料室まではるばる歩いていた。 いつもの如くサボリを働いていた海も、途中しっかりでしっかり捕まえて。 「あつい、だるい、さっちゃん、ヘルプミー」 首根っこを掴まれた海は最初は不満げだったが、今では完全にバテた表情をしていた。 「暑いのは皆同じだ。お前は部活動に勤しむ生徒を見習え!」 椿は窓の外の、走り回る生徒たちを指差す。野球部だかソフト部だかの気合いの入った掛け声が静かな廊下に染み入った。 「部活なら私も生徒会頑張ってる、今!」 「サボリ魔が白々しいな」 違うもん!やってるもん!叫ぶ海はキイキイと鳴くが、椿はただ呆れたような視線を返すのみだ。170センチを見上げるようにして、海はひどく憤慨する。 「全くこれだからさっちゃんはさ…」 多少機嫌を損ねたらしい彼女は、ぶつぶつとわずかな文句を漏らしつつ4階に向けて歩みだす。 窓から太陽の光がさんさんと差し込み、ぬるまったい廊下は長く続いていた。 不意に。 椿が、目の前で前を歩く海のスカートがひらひらと靡いているのに気づく。 「…海」 「んー?」 校則より少しあげられた膝上のスカートは、見えそうで見えない位にめくれて、靡いて、戻る。 しかしながらもう少し離れれば見えそうだ。 「スカート丈が短いぞ」 何となく気恥ずかしい気分になった椿は立ち止まり、赤い頬を隠すように顔を逸らしながら呟く。その間にも一番上の段を登りきった海は実に不思議そうだ。 「いつもこれ位だよ」 振り返る拍子にスカートが空気を含み、チラリとピンクを目にした椿はぐっと息と唾液を飲み込む。一瞬だけ視界に入ったピンクとフリルが頭にひどく焼き付いた。 「とにかく!その丈は校則違反だ!」 「みんなこの位だし!」 「短い!それだと、パ、パ、下着が見えるだろう!!」 「えー、皆見ちゃいないよ」 「僕が今困っている!」 そう怒鳴りつけてから、椿はしまったと口を押さえる。これではパンツを見たことを自己申告したようなものだ。 「パンツ、見たの?」 海は丸い目を何度も瞬きした後、少しだけ赤くなってスカートの裾を押さえた。 「さっちゃんの変態」 「偶然目に入っただけだ!まぎらわしい言い方はやめろ!」 「えっち」 「黙れ!」 スタスタと階段を登りきった椿によって、海の口は塞がれた。無論、手で、だが。 「むごむご」 「スカート丈を、直せ!」 「もご、しゃす、け」 「何だ、素直に直す気になったか」 「ちゅーしよっか」 その後真っ赤になった椿は慌てるあまり、勢いよく後ずさり階段から落ちかけたという。 #むしろチューしたい title by みみ様 2011/7/29 |