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黒光りするおぞましい生き物よりも、目の下にクマのできるテスト期間よりも。
世間でいう“ナンパ”なるものが、私は大の苦手で嫌いだった。
「可愛いそこの君、名前は?これから暇?俺とデンジャラスでリスキーなデートしない?」
だから、今。
猛烈に困っている。目の前で揺れる、明るい茶色の髪の毛を見ながら私は引き攣った笑みを浮かべていた。
「あーっと、ちなみに俺は紀田正臣!趣味はナンパ、誕生日はロマンスの日!」
聞いてない!と盛大に突っ込みたくなる。
紀田くんとやらは激しいジェスチャーを添えながら、私の座っていた植え込みに腰掛けた。しかも隣だ。
「おーい、可愛い子ちゃん?名前はー?」
「…如月です」
「如月さん?ああ、名字だけじゃなくて俺は名前も知りたいんだけど!如月さんとは是非ともディープな関係に…」
うんたらかんたら。よくそんなに舌が回るものだってくらい彼は饒舌だった。
「で、名前は!」
「…………夏です」
何十秒何百秒も口を動かしつづけた彼の努力に押され、私は小声で自分の名前を吐露した。瞬間、彼は目をきらきらさせて予想道理のほめことばを口にする。
「いやあ、君に似合うキュートな名前!夏の可愛らしさは名前からも来ているに違いない!」
「……ありがとう、ございます」
是非連絡先も、と紀田くんは前触れなく私の手に触れた。とゆうか自然な流れで私の手を握ったのだ。あ、やばい。震えてるのばれる。
「…もしかして怖かった?」
「あ、いえ。えと、ナンパみたいなのとかされると、なんとなく…」
怖くなかった、という訳ではない。元々男の子は得意ではないし。
ただ、紀田くんがあまりにも急にハイテンションを落としたせいで上手く話せなくなってしまった。
「そっか…」
紀田くんは笑顔を浮かべ直して隣から立ち上がった。
何をするのか見ていると、早々に鞄を直し手を振る。
「こんな可愛い子ちゃんを怖がらせるなんて俺も失格だー!もう1度ナンパ道を学び直すから、またな!」
意外にも。
紀田くんは早口で(しかしジェスチャー付き)それだけ言うとこちらに背を向けた。
思わず。気がついたら私は。
「連絡先、教えてください」
一歩踏み出し、紀田くんのパーカーを掴んでいた。
私の顔は今、真っ赤だろう。
#ラッキーエンドっていうかな
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リク消化遅れてすみませんああああ(ダイナミック土下座
初正臣でいろいろ至らない点があるかと…!すみません!しかし正臣に目覚めました^▽^←
返品、修正受け付けます。
参加ありがとうございました!