- 「は…」 折原臨也は、本当に久しぶりに間抜けな声をあげた。 目の前には、塊。 布にくるまれた、少女が気持ち良さそうにに眠っていた。 * つい先刻。 臨也のもとに、大きな段ボールが配達された。送り主の欄には、コンピュータで名前だけが印字されている。 「九十九屋…」 何で俺の住所知ってるんだ、と悪態をつきつつ。臨也は昨夜の九十九屋とのチャットの内容を思い出していた。 粟楠会からの仕事で、どうしても欲しい情報。九十九屋はそれを提供する代わりに、ある事を要求してきた。 “大切なものを送るから、それを預かってくれ。ちなみに雑に扱ったら今後一切情報提供はしない。” 臨也としては、仕事上で九十九屋との関わりがなくなるのは些か不便だ。何より物を預かるだけなら、と了承した。 さて…何が入っているのか、臨也は極力丁寧に段ボール開け、そして。 「は…」 折原臨也は、本当に久しぶりに間抜けな声をあげた。 それから冒頭に至ったのだ。 * 段ボールの中に入っているのは、確実に生身の人間だ。 とりあえずこのまま放るわけにはいかないと、臨也は小さな体を軽く揺さぶってみる。 「むむう……」 「……」 ゆっくり瞼を上げた少女の、子供らしいくりくりとした瞳。その赤みがかった瞳は臨也を捉えた。 「君は何?何でここに入ってたのかな?」 「わたしとおなじ!お兄ちゃん、目が赤い!」 「…」 少女は段ボールに入ったまま起き上がって、にこにこ笑いながら臨也の瞳を指差す。 少女の栗色の髪のてっぺんから、ぴょんと長い毛が踊った。所謂アホ毛だ。 「ではではわたしは貴方の質問に答える!わたしは九十九屋鈴で、九十九のおじちゃんに送られたのです!」 アホ毛を躍らせながら、少女は勢いよく立ち上がって自慢げに名乗った。勢いで剥がれ落ちそうになる毛布をたくしあげる鈴を見ながら、しゃがんだ臨也は何も言えなくなくなる。 (まさか九十九屋の奴…これを預かれと?) 「あなたの名前は?」 「…折原、臨也だよ」 人間を愛していると豪語する臨也にも、苦手なタイプの人間はいる。ちなみに彼の双子の妹はその代表格だ。そして目の前の純粋無垢な少女もそうなりかねないと、考える。 そんな心情を知らずか、鈴は段ボールから飛び出すと臨也の服を引っ張り、笑いながら言った。 「いざやくん、寒いから布を希望します」 先程から、毛布がめくれる度に肌が見えるのは服を着てないからだと理解し、臨也全てを引っくるめたため息をついた。 (もしもし波江、今すぐ小さい女の子の服と下着買ってきて。…違う、そういう趣味はない) The toy chest was opened (おもちゃ箱は開かれた) 2011/2/20 |