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!臨也スキーな方は逃げましょう
ロリコンがいます


「む、これはまことに“美味”ですね!」
「そ、そう?」
「はいです!みかどくんは優しいですねー」

はなけなしのお金を叩いて買ったクレープを、鈴は嬉しそうに頬張っていた。
駅から一番近いベンチに腰をかけつつ、帝人は困ったように視線を右往左往させる。
隣には一番安い生クリームクレープを頬張る、身元不明の少女だ。

「あ、あの…鈴ちゃん」
「食べたいですかー?」
「いや、違…」
「あーん、です。お口を開けてください」

どうにも断れず、言われるがままに口を開ける。
口に突っ込まれた生クリームクレープは、シンプルイズベストというのか、すごく美味しく感じた。


「みーっかど!人を呼び出しておいて、いたいけな幼女とデートなんて…お前はいつからそんな男になったんだ!」
「んぐっ…!」

思わず甘い生クリームを喉に詰まらせる帝人を小突いたのは、前方から歩いてきた金髪の少年、紀田正臣だった。後ろには遠慮がちに2人を見つめる少女、園原杏里もいる。

「ちがっ、違うよ正臣!園原さん!この子が声をかけてきて、なぜか僕の名前知ってて。それで困って思わずメールを…!」

突然現れた2人を見上げながら、鈴は不思議そうに帝人のシャツの裾を引っ張った。

「みかどくん、だれです?」
「僕の友達だよ。これが紀田正臣で、あちらが園原杏里さん」

おお、と謎の感嘆を漏らしつつ鈴は頷く。後から帝人はなぜ2人を紹介しているのか、自問自答したが。

「あんりちゃん、まさおみくん、よろしくです!私は、鈴です!」

ベンチから立ち上がった鈴は小さな手を差し出して笑う。

「可愛い子ですね」

杏里は小さく帝人に囁いて、鈴と手を握った。杏里の反応に帝人は安堵の表情を見せたが、気になるのは正臣の反応である。

「正臣?」
「あ、おう!鈴か!いやあ可愛い君にぴったりな可愛い名前だ!」

正臣は笑顔を繕い、いつもの調子で言葉を紡ぐ。視線は少しだけ鈴のコートと瞳をさ迷い、顔まで戻った。
赤い瞳に、ファー付きの黒いジャケット。フードにファーと犬耳のついたそれと、赤みがかった瞳が映える色白い肌など色々な部分が目に入り、そして世界一嫌いな人物を彷彿してしまう。

「まさおみくん、そんなにこれを見てもあげないですよ」

視線を感じてか、クレープを食べ終わった鈴はジャケットを握りしめてフードを被りながら言う。

「大好きな人がくれたものなのですよ」


*

新宿の自宅兼仕事用マンションで、折原臨也は一人笑みを漏らしていた。

「何よ、にやにやして」

コーヒーをたたき付ける波江は心底不快そうに臨也に尋ねる。臨也は何も言わないまま、さらに笑顔を絶やさないままそばのモニターを指差した。

映し出されているのは、波江も顔見知った鈴である。さらに見知った高校生3人と一緒に楽しそうに話していた。

「鈴がさ、俺の事大好きだってさ。馬鹿みたいだよね」

臨也はそう言うが、顔からは整ってはいるがだらしのない笑みが抜けていない。

「…あなたもとうとうロリコンね」


Lolita complex and pure girl
(ロリコンと純粋な少女)

2011/7/24




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