「開かなくなってる」

がちゃがちゃとドアノブをまわしても扉はびくともしない。みんなはソファに腰かけて思い思いに休んだり考えたり。そんな中でも天谷くんだけはひとり扉の前で体育座りをしてゆらゆらと揺れていた。それもとても楽しそうな表情で。わたしは扉から手を離し天谷くんをじっと見つめると、ちょうど天谷くんと目があってしまった。

「来いよ」
ぽんぽんと自らの膝を叩く天谷くん。それはわたしに膝に座れってことですか。ぶんぶんと首を振ればしびれをきらしたのか腕を伸ばしわたしの腕をつかみ一気に引っ張る。逆らえることもなくわたしはぽすんと天谷くんの腕に収まった。この感覚懐かしい。ふとあの病院での縄跳びが頭をよぎる。やめよう、思い出したくない。頭をふって忘れようと必死に挌闘しているわたしを包む天谷くんの腕に力がこめられる。

「うめちゃんの抱き心地最高」
「やめっ」

抱き枕のように後ろから尋常じゃない力で抱きしめられ窒息寸前。奥のほうで二人ってつきあってるのだとか、こんなときに何やってんだよとかいろいろ聞こえる。ごもっともです。わたしの力じゃ抜けだせれないみたいだから大人しくしておこうと観念した。


「それにしてもまだかよー、ダリー、おせー、マジおせー、早くー」

うわ言のように遅い遅いと連呼しながら揺れる天谷くん。彼が揺れるいこーるわたしも一緒になって揺れるというわけで。揺れ方が小刻みですごく怖いしそれにすごく、眠い。


「あ、寝た」

おーい起きろなんていう天谷くんの声は遠くなっていくし視界は霞むし何も考えれない。そこからわたしの意識はなくなった。