「うめちゃんはい」
「えっとこれ何かな」
「わかんないけど美味しいよ、それ果物のタンクに入ってたし一番いける」

いちかちゃんから丸いボールみたいなものを渡されて困惑する。周りをみれば美味しい美味しいとみんなが口にしていた。危険性がないとはいえないけれどわたしのお腹も限界なわけで。わたしは疑いながらもこの得体の知れない球体を口に運んだ。

「っ、おいしい」
「でしょ」

にひりといちかちゃんが笑い、まだあるよだなんて大量に球体を渡してくる。手がいっぱいいっぱいになって苦笑いするしかなかった。この謎の球体の食べ物のおかげで部屋全体が和気あいあいをした空気になってきた、瞬間。

「オゥイェス!」

ずっと黙っていた銅像が声をあげた。それに続いて部屋に設置されていた全ての銅像が叫ぶといままで開かなかったドアが突如開く。同時に一目散に飛び出す天谷くん。天谷危険だぞとみんなが叫ぶのを聞きもしないで走っていく天谷くん、もうその姿は小さくなっていた。天谷くんを追うようにわたしは外にでた。それは高畑くんも同じみたいで。

「あっ、ちょ瞬!うめちゃん!」

いちかちゃんが後ろで声をあげる。いちかちゃんの声がどんどん遠くなるのを感じながらわたしは走った。走っている途中に反対側の白い建物からも誰かが出てくるのを見た。わたしたちと同じ八人。ちょうど真ん中に縄。それを区切るかのようなKEEP OUTの文字。そっか、わかったやっとわかった。

「つなひき、だ」
「よっこいSHOW TIME!」

そうわたしが呟いたのと天谷くんの叫びが重なった。一人でぐいぐいと縄をひく天谷くん。反対側の人たちはそんな天谷くんの姿をみて青ざめた顔で走ってきた。けれどもあの人たちがたどり着く前に縄は引かれてしまった、天谷くんの手によって。やっとのことでわたしも追いつき天谷くんの近くに寄る。

「天谷、くん」
「もう終わりかよ…」

不服そうな天谷くん。するとどこからか銅像たちが飛んできて反対側の人たちを囲んだ。嫌な予感。咄嗟に目をつぶったわたしの耳には銅像たちの叫び声と誰かの悲鳴、それと天谷くんの楽しそうな笑い声しか聞こえなかった。