「天谷くんは二階行かないの」
「上がらない」
「なんで、」
「俺はこの扉が鍵だと思うんだよね、だから見張ってるの」
「っわたしも見張る」

天谷くんの隣に行きじっとドアを見つめる。そしてドアに書かれているひいて全滅せしめたらおわりという言葉を必死に推理する。悶々とその言葉について考えていると、ふいに天谷くんが口を開いた。

「うめちゃん団体行動苦手だろ」
「えっ」
「でも置いていかれたくなくて必死についていってる」
「………っ」
「あたり?」

わたしはこくりと頷く。完璧に図星だった。なんでこうも彼は的確に痛いとこを突くんだろう。ちらりと天谷くんの方をみると面白そうに口角をあげてわらっていた。

「うめちゃんは俺と同じニオイがする」
「そう、かな」
「けど少し違う」
「違うって……」
「俺はあんな他の奴らのために命かけるなんて真っ平ごめんだし」
「っ話が見えないよ」
「でもあいつらみたいにただ生きようとしてる奴は全然そそらねえ」

天谷くんの言ってる意味がさっぱりわからなかった。しばらく沈黙が続き天谷くんと無言のままにらめっこしていると後ろから高畑くんといちかちゃんの声が聞こえた。

「あっ二人ともこんなところに」
「着いてきてるかと思ってたのに居ないし心配したんだからね」

振り向くとぞろぞろと二階からみんなが帰ってくる。一度座って作戦会議だという高畑くんの言葉でみんながテーブルを囲んでソファに腰ついた。そして二階の構造を見ていないわたしと天谷くんのために奥くんがぽつりぽつりと話し始めた。

「とまあそんな感じで一人一部屋の全員分の部屋があった」
「緊張感なくなっちゃった私…」

全員の緊張感がほぐれたようでみんなふう、と安堵のため息をつく。そんな中わたしだけが考え込んでいた。休む場所があるってことは長期戦になるってことかな、なんてわたしの嫌な勘はよく働いた。