「天谷くんこっち何もいないよ」
「俺は何かいたほうがいいんだけど」
「嫌だよ」
なんて話しながら廊下を二人で歩く。床に転がっているのはさっきと同じで体が切断された死体ばかりだ。それに量が増えている気がする。病院内を歩き続けているとなにか近くで床を叩く音がした。

「…っ何の音だろ」
「行ってみようぜ」
「ちょ、天谷くん」
半ば強引に腕を引っ張られながらも天谷くんについていくとこけし二体が大縄を振り回していた。間には男の人がひとり。ひとりで縄跳びをしている。

「た、たすけてくださいっ100回飛ばなきゃいけないんですけど、一人じゃカウントできないって」
男の人がぜえぜえと息荒げに叫んだ。汗の量と表情からもう100回以上は飛んでいるんだろう。どうしよう、どうしよう、見捨ててなんて置けない。ぐっと拳を握ってわたしは大縄に向かい走って、飛んだ。

「ありがとうございますっ」
「これで二人、ちゃんと数えてよ」
「三人だよ」
「天谷くっ、なんで」
私が言い切る前に楽しそうだったからさ、と即答する天谷くん。やっぱり理解できない。いろいろ納得できなくて唸っているわたしを余所にこけしはカウントを始めた。



ああ、まただめだった。
足元にはわたしが助けたかった男の人の腕。100回目前で力つきたあの人は目の前体を切断された。いま飛んでいる縄によって。

「天谷くんごめんね」
「なにが」
「これ巻き込んじゃって」
「俺が勝手にはいったんだけどね」

それもそうだった。それよりいつまで続ければいいんだろう、天谷くんがはじめからカウントしていてさっき7000とか呟いていたな、単純計算でももう2時間ちかくは飛んでいることになる。足も限界に近づいていた。

「うめちゃん大丈夫」
「ちょっとしんどいかも」
「もう終わるから待ってて」
「…っ終わるって」

何のことだろうと思った瞬間に縄をまわしていたこけしが声をあげた。