あのこけしに巻かれてからどれくらい経ったんだろう。ずっと真っ暗だ。もう死んじゃうのかな。わたしの人生短かったな。全然たのしいこともなかったし。もっと楽しんでおけばよかった、そう恋愛とかね。彼氏できたことないよ。うん彼氏ほしかったなあ、一緒に帰ったり手つないだり抱き合ったり、ね。ああもうキスだってしたことない、あっあれ、それはしたっけ…天谷くんと。うん、そうそうこんな感じで天谷くんの顔が近づいてきたと思ったらいきなり、

「えっあれ天谷くん」
「残念起きちゃった」
「…っわたし死んで」
「いきなりうめちゃんこけしの中からでてきて驚いた」
「こけしって…」

「部屋にこけしが三体はいってきてかごめかごめだっけ、なんか歌いだしてさ。後ろ誰かなんかわかんねえからとりあえずうめちゃんの名前かいてたこけし居たなってそいつの名前呼んだらなんかあっててさ」

俺やべえなんて嬉々と話す天谷くん。大体の内容がわかったのに全然理解できないのはそうだこの体制だから物事が考えれないんだ。なんでわたしは床に寝ていて上から天谷くんが覆いかぶさっているの。

「天谷く、」
「ん?なにうめちゃん」
「なんでこんな顔近いの」
「そりゃキスすれば目覚めるかなってほら子供の本であんだろ」
「起きたから大丈夫だよ、あの退いてもらってもいいかな」

必死で胸板押し返すと天谷くんは満足そうに笑い耳に口を寄せ囁く。

「俺うめちゃんの恩人だけど」
「っありがとうございました」
「お礼はキスでいいよ」

にやりと笑う彼の顔に嫌な予感しかしなかった。天谷くんの手が私の後頭部に回り、ゆっくりと引き寄せられた。こんなことしてる場合じゃないよ天谷くん。