どうしてこうなった。

教卓のうえで大声をあげるだるまをじっと見つめる。ちらりと横をみてみればさっきまで話していた委員長が死んでいた。首がないのだ。即死だとわたしでもわかる。

「だーるまさんが、転んだッ」
尚もだるまは淡々と声を張り上げる。先ほど誰かがだるまのうしろにあるボタンと「おしたならおわり」という文字を見つけ今クラス一丸となって死に物狂いでボタンを押そうとしている。

そんな中わたしだけ動けないでいた。

でもだるまにも知性があるようで生徒がどんどんと距離を近づけると振り向くタイミングを変えてきた。次々と倒れていく生徒。それでもわたしはまだ起こっていることが理解できなくて涙もでない。


「だーるまさんが………」
「これで、終わりだ!」
ひとりの男子がだるまの前にたどり着きだるまに手をのばした、その時。転んだと叫びながら勢いよくぐるんとこちらに向き直るだるま。首がはね飛んだ男子生徒は教卓につっこみ反動でだるまが飛んできた。わたしめがけて。

反射的にだるまをキャッチしてしまいだるまと至近距離で向き合う形になる。恐怖でどうにかなりそうだった。

「椎名さんボタン押して!」
「はやく押してよー!」
クラスのみんながわたしに向かって怒鳴る。こわい、こわい、こわい。かたかたと震える指をボタンに添えて力を加える。するとだるまの口が開き終了と間延びした声が教室に響いた。

わっ、とみんなが泣きながら雄叫びをあげ喜んでいた。みんな次々とわたしにありがとう、よくやったと言葉をくれるから自然と笑顔になる。と次の瞬間、突然クラスみんなの首が飛んだ。同時にさっきまで黙っていただるまも口をひらく。

「椎名うめ、生きる」
ぷすぷすと煙をたてながらそう叫ぶだるま。早よ体育館に行きなはれと喋るだるまの声を聴きながらこの時はじめてわたしは泣いた。