数週間前、一度も話したことない転校生の狩屋くんに告白された。好きです付き合ってくださいなんて真っ直ぐに言われて勢いでわたしは二つ返事をしてしまった。けれど、そのあとの狩屋くんの照れたように笑う姿にときめいたんだ。後悔なんてしてなかった。とても狩屋マサキくんが可愛く見えたんだ、そのときは。


「絶対、詐欺だよね」
「なにが」
「狩屋くんのことだよ。性格いい子だと思ってたのに」
「まるで今の俺は性格悪いみたいな言いかたするね」
「そう言ってるの」


ひどいなあ、と口ではそう言いながらケラケラ笑う狩屋くんから視線を背けて黒板に目を向けた。ただいま授業中だ。ちなみに狩屋くんの席はお隣、席替えをすればかならず隣は狩屋くん。これ絶対なにか仕組んでる。


しばらく黒板を見つめて授業をまじめに受けていたら、隣から狩屋くんのねえ、という声がした。とりあえず無視しておいた。そのあともおーいとか聞いてるだなんて言葉が飛んできたけどこれも無視。


少ししたら狩屋くんも諦めたのか静かになった。と思った矢先にぽいっと横から飛んでくる紙くず。


ここで怒っては負けだと思い、沸き上がる怒りを押さえ黒板から目を逸らさない。狩屋くんがぼそりとつまらない、そう呟いた。


しばらくすると狩屋くんは消しゴムのカスをなげてきた。それも大量に。これには、わたしも怒りが押さえきれなくってガタッと音を鳴らしながら勢いよく立つ。


「いい加減にしてよ!」


わたしが叫んだと同時に頭に衝撃。後ろを振り返るとものすごい笑顔な先生がたっていた。笑顔だけど後ろに鬼が見える。手には教科書。あれで叩かれたのかわたし。早く席につけと先生の声が教室に響いた。はい、と力なく答えわたしはおとなしく席についた。


横をみればおなかを抱えて大爆笑している狩屋くん。出会った時期のあの照れ笑いとはほど遠い子供みたいな笑い方。でも心から笑ってるように見えて、狩屋くんにはこっちの方があってる気がしてきた。狩屋くんはわたしが怒られたことで笑ってるんだけど。そう考えるとさっきの事を思い出して無性に腹がたった。わたしも嫌みの一つを言い返さないと。


「やっぱり性格わるい」
「その性格悪い人間と付き合ってるのはどこの誰かな」
「…わたしだけど」
「嫌いなら別れるって言えばいいじゃん」
「…」
「あっ、俺が怖いから?」


とても悲しそうに笑いながら、だから言えないの?と言う狩屋くん。そんな狩屋くん見ていたくなくて反射的に、違うと言葉を遮った。なにか勘違いしてないかな。確かにわたしは狩屋くんに性格悪いとか、猫かぶりとか言ったけど嫌いだなんて言ってないし、狩屋くんが怖いとも思ってないよ。


「ちゃんと…好き、だから」


ぼそぼそと俯きながら呟く。最後のほうは声が小さすぎて自分でも何をいったかよくわからなかった。ちらりと狩屋くんのほうを見れば目を真ん丸くして驚いた表情を浮かべる彼がいた。


「はじめて聞いた」
「はじめて言ったもん」
「今のほんと?」


こくこくと必死に頷く。すると狩屋くんは何かいいことをひらめいたのか、とても悪い顔をしながらこちらに笑顔をむけてきた。


「ねえ、授業さぼって保健室でいちゃいちゃしようか」
「……する」


せんせー、頭痛いんで保健室いってきます。右に同じく。そういって先生の有無など聞かないまま教室を抜け出した。目指すは保健室。保健室ついたらもう一度言おう、狩屋くんに好きって。





なんて素敵で可愛いのさまに提出!ありがとうございました!

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