「お早う円堂」
朝起きてすぐ、写真の中の円堂にそう言う。写真の中の円堂はいつもにこやかで、俺に挨拶している様に見えた。部屋のドアを開け、洗面所に移動する。冷たい水で顔を濡らすと、少し気分がさっぱりした。
「ランニングでもいくか」
時計は6時を指していて、練習に行くには少し早い。お気に入りの青いスニーカーを履くと、外に飛び出した。

公園の近くに行くと、見慣れた影があった。豪炎寺だ。豪炎寺はこちらに気付き、お早う、と声をかけてきた。俺は笑顔で手を振った。お早うは言わない。お早うは、円堂にだけ言いたいのだ。
「豪炎寺もランニングか?」
このまま去るのも何なのでそう聞くと、豪炎寺はゆるく首を振った。
「シュート練だ」
そう言って豪炎寺がゴールを見る。当然だが円堂はいない。そのゴールは何だかがらんどうとしていて寂しいくらいだ。
「そうか、頑張れよ!」
そう笑いながら豪炎寺の足を見る。お前の足が無ければ、円堂はお前なんかに興味を持たないのに。鬼道だって、染岡だって、半田だって、基山だって、色んな奴らみんな後から円堂を好きになった癖に図々しいんだよ。あ、勘違いするな、仲間として嫌いな訳じゃあない。恋敵としてのしがない空想だ。
「無くなっちゃえ」
呟いた言葉は豪炎寺には聞こえなかったらしく、彼はシュート練を再開し始めた。腕にした時計を見る。円堂に会えるまで、後30分もある。
「全部がいい」
本当、俺と円堂とサッカー以外はみんな消えちまえ!

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独占恋愛型『泥棒猫は悪・即・斬』



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