基本的にはフェミニストで通してきたつもりだ。女というのは敵にまわすと厄介だから、少し優しくしておけと何かのバラエティーで見たからだ。僕の横でアツヤは車のおもちゃを弄っていたけれど、僕はテレビに釘付けになっていた。我ながら可愛くない子供だと思う。嫌われるのが嫌だった、一人になるのが嫌だった。だから皆に優しくした。

「君、嫌い。」
だから女の子に向かってこんな口をきいたのも初めてだ。目の前の少女は長い睫毛をぱちりぱちりと揺らし、可愛らしく微笑んだ。
「知らないと思ったんですか」
少女の目は決して笑っていなかった。こちらをじっと見据えたまま、揺るぎもしない。何となくだが少女は自分と似ているなと思った。
「あんなに私を睨んでおいて」
彼女の声は落ち着いていて、透明感がある。だからこそひんやり冷たく感じた。
「やっぱりバレてた」
ぺろりと小さく舌を出す。少女は困った様に首を傾げたが、やはり視線は僕から外れない。
「貴方は結局どうしたいんですか。」
彼女の長い髪が揺れた。あの髪が短かった時から、彼と彼女はお互いの存在を認識していたのだ。そう思うと一気に憎らしくなってくる。
「出来れば君に消えて欲しいかな」
彼女は薄く笑って、やっと僕から視線を反らした。彼女は今、何を見ているのだろう。
「無理なお願いですね」
少女のシャツの下から、細い腕が見えた。僕は君の腕一本くらい折れるよ、そう小さく呟いたが返事はなかった。




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