「男に生まれたかった」
それが塔子の口癖だった。彼女は、よく分からないが世間一般的には可愛らしいと呼ばれる容姿であったし、優しい性格など寧ろ女子として生きやすい人間だと思っていた。だからその言葉に少し驚いた。
「何で?」
「一緒にサッカーしたいから」
そう言うと塔子は少し不機嫌そうに眉を潜めた。少し考えてみる。もし俺が女子だったらどうだっただろう。塔子の様にサッカーが出来ないことを嘆くかもしれない。それ以前にサッカーをしていないかもしれない。女の子は、おしとやかに生きるものだから。
「俺が女だったら塔子かもしれない」
その言葉に塔子が笑う。口は開けずに微笑むだけの笑い、母親の様な優しい笑みだった。
「じゃあ私が女だったら円堂だな」
そうだな、と返す。塔子は暫く黙っていて、それから少し笑った。
「でもやっぱり、女でよかった」
答えが出た、とスッキリした顔だった。塔子が自身の薄い腹をゆっくり撫でる。
「だって円堂の子が産めるから」
それだけは嬉しいかなと塔子がまた笑った。おしとやかな笑みに、彼女は女の子だったな、と改めて感じた。
「女がいいよ」

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女子に対してよく分からない理論がある円堂さん





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