自惚れてもいいですか



最近俺は、円堂の隣を常にキープしている。何故なら円堂のことを染岡に打ち明けた際「円堂は鈍感だからこれでもかってくらいにアピールしろよ」と言われたからだ。だから食事の時は勿論話し合いやキャラバンでの移動の時も近くにいる。が、自分でもやり過ぎと思えるくらい隣にいても円堂はさっぱり気がついてくれない。しかも近くにいるせいで、嫌な事実まで発覚してしまった。
「へー、アツヤってキャプテンよりも背が低いんだね。」
昨日士郎に言われた言葉だ。言葉のナイフという意味がものすごくよく分かった。今度から言葉に気をつけようと心に誓える位傷ついた。

「あいつ全然気づかねー」
練習が終わりシャワーを浴びた後、着替えながら染岡に言うと、染岡は笑った。
「じゃあ次は抱き着いてみろよ」
からかうような笑いだ。士郎も寄ってきて染岡と何やら薄笑いを浮かべながらアイコンタクトをしている。
「ざっけんな!」
そう叫ぶと、近くの綱海と栗松が爆笑し始めた。染岡も士郎も笑っている。
「円堂さんのこと諦めてくれれば、そんなことで悩む必要無くなりますよー?」
立向井がけらけらと笑って言う。明るい口調だがその後ろの恐ろしい何かを俺は確かに見た。
「まあ、円堂は好きな奴には意外と世話焼くからな。世話されたら喜んどけ。」
風丸が楽しげに言う。小さく頷くと、鬼道もおかしげに笑い、壁山まで笑い始め、皆が笑った。腹が立ってタオルを引っつかみ外に出たが、まだ皆はゲラゲラと笑っていた。

「アツヤ」
夕飯のハンバーグを口に放り込んでいると、隣の円堂が俺の顔を覗きこんできた。まだ髪がしっとり濡れた円堂を見て顔が熱くなる。
「な、何だよ」
先程まで円堂と話していた立向井が機嫌悪そうにこちらを見る。士郎もにやにやしながら俺を見ていた。
「ん」
そう言うと同時に、円堂の手が俺に近付いてきた。反射的に目をつむる。頬に指が当たった感覚がした。
「ついてた」
その声を聞いてうっすら目を開ける。円堂の指先には米粒がついていた。三秒おいて、やっと円堂が俺の口についた米粒を取ったという事態を理解出来た。お…俺格好悪っ…!
「意外と、抜けてるんだな。」
円堂が可愛らしく笑う。そして、その米粒を自分の口に入れた。

何処かで「あーっ!」という誰かの叫びが聞こえる。ヒュウヒュウという口笛も聞こえた。でもそんなこともどうでも良くなる位、今の俺は幸せそのものだ。




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