※小学生パラレル
※吹雪兄弟→円堂


運命の相手を見た、アツヤは目を輝かせてそう得意げに言った。朝一番にパジャマのままで、である。10歳にもなって何を、心の中でと溜め息をついた。実はアツヤはまだサンタを信じていたりと何かと可愛らしい発想の持ち主だ。普段学校で問題児扱いされているアツヤと同一人物か、不安になってくるくらい。もしかして僕ら三つ子?
「どうやって見たの」
無難な返事をする。アツヤはにこにこと顔を緩ませて、バタートーストをちびちびとかじり始めた。
「夢に出てきたんだ」
「夢?」
彼はそこまでファンタジーの住人だっただろうか。今時女の子にだってそんな考えをする子はそうそういない。兄として少し不安だ。
「すっげえリアルな夢なんだ」
アツヤはココアをぐいっと飲み干すと、僕の方に向き直った。よっぽど話がしたいらしい。
「まず俺が雪の中に立ってんだよ、したら指に赤い糸がついてて、あ、それは取れないんだ。仕方ねーからその糸を辿っていったら人がいてさ。そいつの指にも糸が巻かれてて、相手がにっこり笑って、そこで目が覚めたんだ。」
アツヤはそう言い切ると、僕の目をじっと見て「スゲーだろ」と言った。すごいすごいと適当に返したがアツヤはずっとニマニマしていた。

その夜のことだ。ベッドに横になっていると、アツヤの話を思い出した。馬鹿馬鹿しいと息を吐く。隣のベッドを見ると、アツヤが規則正しい寝息を立てて寝ている。顔だけ見れば「運命の出会い☆」とか言っても許される感じだけれども、如何せん、性格が荒々しいため不自然だ。難儀なこと、と思いながら目を閉じた。


結論からいうと、僕も同じ夢を見た。
指に糸が巻きついていて、それを辿ると途中で切れていた。何故だか知らないが「アツヤのせい」だと感じた。双子の直感だ。なので、腹が立ってアツヤを探すと、アツヤの繋がった糸の相手らしき人を見つけた。(これも勘だ)オレンジ色のバンダナに丸い目が印象的な子だ。赤い糸に目をやる。糸の途中に、結び目があった。
「やっぱり」
唇を軽く噛む。アツヤは恐らく、僕の運命の相手を取ってしまったのだ。そんな子に育てた覚えはありません!
「…しょうがない」
自分の糸を見て、新しく結び直した。実をいうと、先ほどのバンダナの子に恋をしてしまったのだ。そんな運命の子を人にあげたくない。アツヤには悪いが、先にアツヤが仕掛けたことだし、もうハサミで切ったし。

朝、アツヤにそのことを話そうとすると、彼はムスッとした顔で「ばれた」とつぶやいた。


ツメが甘いのさ


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